松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

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zoom RSS 日本VC協会が定時総会と講演、パネルディスカッション開催-大企業とVB、VCが切磋琢磨し発展しよう

<<   作成日時 : 2014/07/16 11:52   >>

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新会長に尾ア氏、「成功の反対は何もやらないことだ」(齋藤氏)

 一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会(略称・JVCA、本部・東京都新宿区)は11日、東京都千代田区画像大手町のKKRホテル東京で第12回定時会員総会とパネルディスカッション、講演、懇親会を開催した。総会では3年間、会長を務めた安達俊久氏(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社 代表取締役社長。以下、社名の株式会社と肩書の代表取締役は略)の後任として副会長の尾ア一法氏(アント・キャピタル・パートナーズ会長)を選任するとともに、安達氏は会長を補佐する副会長に就任。専務理事、常務理事をはじめとする理事や監事なども決めた。また、総会後のパネルディスカッションや講演ではベンチャー企業(VB)やベンチャーキャピタル(VC)、VB支援会社等の経営者が日本のVBやVCをテーマに幅広く議論。「策定した計画通りにいかないのがVB。VC投資に伴う株式のプライシング(発行価格の決定)が難しい」といったVB経営の“現場の声”が聞かれる一方、「成功の反対は失敗ではなく、何もやらないことだ」(講演した齋藤ウィリアム浩幸氏)、「VB、VC、大企業の3社(者)が切磋琢磨し、世界に向けて発展するVBを生み出そう」など、熱い思いにあふれた発言が相次いだ。

創業後、VCとの関係ができず苦心-大企業の出資が転機−上場

 総会後に開かれたパネルディスカッションは、ユーグレナ(東京都文京区)の出雲充 社長、AZX Professionals Group(エイジックス・プロフェッショナルズ・グループ、東京都千代田区)の後藤勝也CEO(最高経営責任画像者、弁護士)、BNC(東京都港区)のブライアン・ネルソン創業者兼会長の3氏がパネラーで、モデレーターを呉(ご)雅俊氏(TNPパートナーズ社長、元・日本VC協会会長、現在・同協会常務理事)が担当。
 最初に呉氏が各氏に企業や自己の紹介を促すと、出雲氏が「和名ミドリムシ、学名ユーグレナはワカメや昆布の親戚で、植物と動物の“良いとこ取り”をした藻の一種。これを大量に育てて食品として販売するとともに、高品質のジェット燃料をつくる研究にも取り組んでいる」と自社を紹介。併せて、2005年8月にユーグレナを設立した後、「VCとの関係が構築できず、苦心した」「08年5月に伊藤忠商事が投資してくれたのを機に、JX日鉱日石エネルギー、全日空(ANAホールディングス)、日立製作所、電通なども出資してくれて事業が順調に発展し、12年12月には東証マザーズに上場でき、出資者に恩返しできた」と、これまでの道のりを振り返った。

「シームレスな資本政策を」「日本人は深い付き合いができる」

 続いて後藤氏が、法律、会計、特許、労務などのサービスをワンストップで提供しているのがエイジックスで、「VBをたくさん支援し、これから会社をつくろうという学生もやってくる。また、東証1部のクライアントもいる」と同画像グループの特徴を説明した後、「VCともお付き合いがあるが、リードVCがラウンドごとに変わってしまう傾向があって、IPO(新規株式公開)までの資本政策がシームレスでない」「アーリーステージに対する投資は、盛り上がる時とそうでない時があるなど波がある。日本から世界に向けて良い企業を生み出すため、種類株式の発行も含めて長期的な視野に立ったVB支援が必要だ」と主張した。
 一方、「高校生の時に米国から日本に来て30年(大学は米国)、今46歳」というネルソン氏は、06年7月に株式公開したバリューコマースの元・会長兼CEOで、公開前年にヤフー(ジャパン)から109億円(企業価値220億円)の投資を受け、資本提携したことなどに触れながら、このバリューコマースを公開に導いた旧経営陣らにより、11年8月に設立されたのがBNCで、「海外に事業を展開して『あんなに大きくなった』と言われるようになりたい」と目標を語るとともに、「オンラインショップと実店舗でのモバイル決済とプロモーションのインフラ『SIDO(セキュアIDオンライン)』を開発・提供している」とビジネスの内容を説明。併せて、「当社の顧問は日本の元・大企業経営者や官庁OBなど、すべて日本人。日本人は深い付き合いができるので、VBとVCも信頼し合うことが大事だ」と強調した。

「リードVCがいればアーリー投資も早い?」「優秀なVCistを」

 こうした各氏の発言を受けて、呉氏は「日本のVCはVEC(一般財団法人 ベンチャーエンタープライズセンター)の調査などによると、アーリーからレーターまでの各ステージに比較的均等に投資している。ただ投資先の画像VBが、なかなかレーターまでいかないからアーリーが多くなるという面もある」とVCの立場から解説したのに対して、出雲氏は「今は(新規株式公開が増えるなどで)アーリーステージに投資しやすく、10億円以上の投資を受けているVBもある。だが(一般的に言って)アーリーステージで投資してもらう場合、リードVCがいれば(他のVCも投資を決めてくれるなど)話が早いが、『リードVCを見つけてくれ』というVCもある」と苦言を呈すると、後藤氏も「VBにCFO(最高財務責任者)がいれば良いが、(現実には)なかなかいないので、優秀なベンチャーキャピタリストが増えることが望まれる」とVCに要請した(右上はJVCAの案内パンフレットより)。

計画通りにいかないのがVB、合理的でフェアな株式発行方法を

 この後藤氏の要請に対しては呉氏も「その通り」と意見が一致したが、特に出雲氏が「資本政策をつくっても、必ずしもその通りにはならず、事業計画もなかなか予定通りにいかない(のがVB)。そのため投資に伴う株式のプライシング(発行価格)が難しい」とVB経営者の立場から訴えると、呉氏が「投資契約のアンチダイリューション(Dilution=希薄化=後で発行した株式の価格が前に発行した株式の価格より低いこと)」に言及しながら、さらにパネラーの意見を求めると、後藤氏が「合理的でフェアな方法を皆で考える必要がある」と提案。呉氏も「投資をするというのは、同じ船に乗ること。失敗した時にどうするかなどの留意点を押さえた『ひな型』を作ることが必要」と合意するとともに、「オープンイノベーションによる大企業との提携」にディスカッションのテーマを転換させ、発言を促した。

大企業提携は1社目の壁を破れ−投資と研究の担当者が違う…

 これに関しては、出雲氏が自らの経験をもとに「日本の大企業の入り口のアティテュード(態度)は冷たいが、画像連携が始まるとうまくいく。伊藤忠商事の人について行ってもらい、他の大企業とも提携できるようになると、そうした大企業の新しい設備を使って研究することもできた」と1社目の壁を破るのが重要であることを強調。「大学発VBも大企業との関係をうまくつくれば、成長の可能性がいっぱいあるのではないか」と提言したが、同時に、「大企業は一般的に言って研究開発で提携する時は資金を出してくれるが、投資となると額が下がり、ガードが固い」(呉氏)、「大企業はIPOによってキャピタルゲインを得ようという気持ちは少ない。また大企業の場合、投資担当者と研究開発の担当者が違う」(後藤氏)などの問題も指摘された。
 こうした点に関連して、ネルソン氏が「大企業、VC、VBの3社(者)が深い付き合いをして、お互いに信頼し、切磋琢磨して発展することが大切だ」と訴えるとともに、「皆さん、どうか当社に協力して下さい」と会場の笑いを誘うと、呉氏も「VCが大企業とVBの間に入ってワンクッション置く役割を果たせれば良い。3社(者)が切磋琢磨して発展しましょう」と参加者に呼びかけ、パネルディカッションは終了。この後、「内閣府本府参与 科学技術・IT戦略担当」の齋藤ウィリアム浩幸氏が基調講演した。

生体認証でマイクロソフトに会社売却−日本でイノベーション支援

 齋藤氏は米国生まれの日系2世で、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)医学部在籍中から「寮で研画像究開発し、たくさんの事業を手掛け、失敗して不良債権を抱えたこともある」というアントレプレナー。1998年に指紋などによる生体認証暗号システムを開発して多くの企業とライセンス契約を結び、2004年に会社をマイクロソフトに売却。その後、活動拠点を東京に移して、インテカー(東京都渋谷区)設立し、VB支援をはじめ日本のイノベーションを活発にするコンサルティングに取り組んでいる。
 これまでも政府の会議の委員などを務めているが、昨年から内閣府参与に就任。文字通り、日本のイノベーションを活性化する役割を担う1人として活動している。

27歳が最もイノベーティブ、アントレプレナーは変革の推進者

 その齋藤氏はまず、「イノベーション=サイエンス+エンジニアリング+デザイン」だと解説しながら、「シリコン画像バレーの強いところはダイバーシティ(多様性)だが、日本はダイバーシティが少ない。その原因の1つは女性の活用が不十分なことで、もう1つは年齢の問題」と分析。アントレプレナーの創業年齢などから 「私の仮説だが、27歳の時が最もイノベーティブ。しかし日本は年功序列で、ビル・ゲイツのような人がいても無視されるのではないか」と日本のビジネス風土を批判する一方、「イノベーションは失敗から生まれる。失敗すると自分の強みと弱みがわかる」「アントレプレナーを日本では起業家と訳しているが、アントレプレナーというのは、変革を推進する者。アイディアをものにする人のことだ」と独自の“定義”をスライドに表示した(右下の写真)。

 PassionとVision−私たちも自信を持って実行しよう

 また、そうしたアントレプレナーはいろんな要素を持っているが、「成功するアントレプレナーが必ず持っている画像のが、Passion(パッション)とVision(ビジョン)だ」と指摘。さらに成功するVBに共通する点として、「文系と理系の2人で創業し、イエスマン同士ではないケースが多い」と説明するとともに、「人間は間違い、機械は壊れる。だから、re−sil−ience(レジリエンス=復元力=不測の事態や状況の変化に対応する力)が大事だ」「日本はGDPが世界2位になってから変わっていない。日本では失敗を責める風潮があるが、失敗にどうリスク対策するかが重要だ」と力説。最後に「日本人はアイディアも解決策も持つなど、ポテンシャルはすごい。ただ(現状では)実行できていない。自信を持たせることが大切で、成功の反対は失敗ではなく、何もやらないことだ」と強い口調で語りかけ、講演を終えた。  

「1人でも多くの起業家を」−VB創造協議会と表彰制度も創設

画像 この後、懇親会に移行。最初に尾ア新会長が「齋藤氏はアントレプレナーは変革を推進する者だと言ったが、私たちは1人でも多く、そうした起業家を輩出し、良質な資金を提供して根気よく支援したい。また、ベンチャーキャピタリストを1人でも多く増やすとともに、地域を支える中堅・中小企業を支援することも重要だ」と挨拶(左上の写真)。
 続いて来賓として経済産業省の菅原郁郎 経済産業政策局長(日本経済再生本部 事務局長画像代理)が「昨年の総会でも、日本の成長はベンチャー(VB)がカギだとお話しさせていただいたが…」と前置きして、6月に発表した「『日本再興戦略』 改訂2014−未来への挑戦−」を引き合いに出し、「(税制などの法律の改正・整備を必要としない)VBと大企業との連携や大学発ベンチャーを創出するための『ベンチャー創造協議会』を9月にもつくるとともに、年内にもインパクトのあるベンチャーを表彰する総理大臣賞などの制度を画像創設したい」旨、力を込めて挨拶した(右上の写真)。
 また文部科学省の川上伸昭 科学技術・学術政策局長も「大学発ベンチャーは研究のほうに思いが向いて、商売のほうに思いがいかないケースが多いが、早くからVCが関与して、大学発ベンチャーがベンチャーマインドを持つようなエコシステムを創って欲しい」と要請した。
(左上の写真)

北城氏「エンジェル税制周知を!社長経験者なら無給でVB支援」

 この後、元・経済同友会代表幹事で日本IBMの社長、会長を務めた北城恪太郎氏(現在・同友会終身幹事、画像日本IBM相談役)が「創業期のベンチャー企業(VB)には個人が出資することが大事だが、08年に改正されたエンジェル税制は投資した時点で投資額を控除できるなどの優遇措置がある。私は地方に行っても経済人と話をする時も、この税制の良さを説明するためにパンフレットをカバンに入れている。皆さんも是非、多くの人に知らせて下さい」と穏やかな口調で呼びかけるとともに、「私も6社のVBに投資し、社外役員を務めているVBもあるが、私も(販売先の開拓などのために)VBといっしょに説明に行く。VBは信用がないので、社長経験者が同行するなどして支援することが必要だ。しかも社長経験者なら無給でできる」と強調。併せて、文部科学省の大学改革により、来年度から学長の権限が強化されることに触れた後、「乾杯!」と音頭をとると、会場には和やかで活気にあふれた懇談の輪が広がった。
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奇人、変人を評価し、VC投資額を5000億、1兆円に増やそう

 懇親会は最後に安達・前会長が「3年前に会長になった当時は、年間のVC投資額が1000万円を割り込むよ画像うなどん底の状態だったが、その時の総会で私は、投資額を5000億円に増やし、さらにその後、1兆円を目指したいと言った」と振り返りながら、「以前は『起業家精神を…』と言っていたが、最近は『奇人、変人を評価し、今までにないものを生み出す起業家が増える素地を創ろう』と主張している。奇人、変人を増やし、投資額も増やそう」と挨拶し、今年の総会に関連する行事、イベントを締めくくった。
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 懇親会の席で、北城氏に「北城さんは(米国系の)IBMの社長でしたから、VBのことが良くわかり支援できますが、日本の一般の企業の社長にVBの支援ができるでしょうか?」と聞いたところ、「“毎月給料が入ってくるのが当たり前と考えている部長”ではだめだけど、社長を経験した人ならできる」というのが、北城さんの答えでした。やはり、経営トップというのは違うものだと改めて感じ、筆者(松浦)も無給の支援者の力によって、日本のVBが増え成長することを願いたいと思いました。
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  VC投資額も13年度は1695億円で前年比66.7%増
 日本のVC投資額は、VEC(理事長・市川隆治氏、本部・東京都新宿区、市川氏は日本VC協会の専務理事)の調査によれば、06年度に2790億円と最高でしたが、09年度は875億円まで低下。その後は、1000億円を回復し、13年度は1695億円(前年比66.7%増、今年5月28日発表)にまで増えています。また、金額別に投資ステージをみると、シード(10年度=4.4%、11年度=15.7%、12年度=22.5%、以下同じ順)、アーリー(28.1%、28.6%、35.3%)、エクスパンション(3画像4.1%、20.4%、26.4%)、レーター(33.1%、35.3%、15.7%)の割合となっています。
 VECは12年4月に財団法人から一般財団法人に移行したのを機に、VBに対して50万円〜数百万円の「スモール出資」を検討していましたが、最近、VCの投資が持ち直したことから、同出資事業はとり止め。その分、VC、VBに関する調査に一層、力を入れるということです。◎  ◎
 パネルディスカッションでユーグレナの出雲社長が「……事業計画もなかなか予定通りにいかない(のがVB)」と話していましたが、私(筆者)も編集に協力させていただいた日本コンピュータ・ダイナミクスの下條武男 代表取締役会長の「楽しくダイナミックに! ベンチャー精神貫き、上場実現」(10年6月 日刊工業新聞社刊、下條氏は現在は名誉会長)にも「ビジネスプラン通りに事業が進むことはまず、ありません。……謙虚さとともに、ビジネ画像スプラン、事業計画が社会の要請、市場のニーズにあっているかどうかを常に点検し、修正していく柔軟さも欠かせません」 と書かれています。同書は、下條氏の独立・創業(1967年3月)のいきさつから現在(発刊時)までの事業の奇跡、経営理念、VBに対する考え方などをまとめたものです。関心のある方はお読み下さればと思います。
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