松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

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zoom RSS 日本VC協会が総会と討論会など開催−会員が40増え160超に−新産業と雇用の創造に向けて画期的な年に

<<   作成日時 : 2016/07/12 21:39   >>

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創業期と発展期に複数のVCが役割分担、経営者の力を引出す

 一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会(略称・JVCA、会長・仮屋薗聡一氏=株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナー、本部・東京都新宿区、この記事では日本VC協会とも表記)画像は7月8日、東京都港区の虎ノ門ヒルズで第14回定時会員総会とパネルディスカッション、懇親会などを開催した。パネルディスカッションでは特に、東証マザーズに上場したベンチャー企業(VB)の若手経営者が「試行錯誤の赤字の段階で投資してくれたベンチャーキャピタル(VC)と、その後、投資してくれた(大手)VCの両方の支援により成長できた」「VCの担当者が(私=経営者)の力を引き出し、求めているコミュニティにつないでくれた」など、実際の体験をもとに発言。懇親会では「JVCAの会員は、この1年間で120から(約)160社(者)に増えた」「増えたうえに大同団結している」「大手VCの入会は歴史的(意義)」などとJVCAの活動が一段と強化されていることが主催者や来賓から主張・報告され、まさに新産業と雇用の創造を目指す日本のVCに対する期待の高まりを強く感じさせた。

世の中をワクワクさせたい、ユーザーに合ったニュースを届ける

 総会の後で開かれたパネルディスカッションでは、B Dash Ventures株式会社(以後、社名の株式会社は略)の渡辺洋行 代表取締役社長がモデレーターを担当。アカツキ(Akatsuki)の塩田元規 代表取締役CEO(最高画像経営責任者)とGunosyの福島良典 同CEOの2人がパネラーとして討論。最初に渡辺氏が「前のセッション(テーマ「スタートアップのコーチング・ガバナンス」=非公開)は重厚感があったが、それを前座のつもりで…」と参加者を笑わせながら、塩田、福島の両氏を「この1年ほどの間に上場した若手経営者」と紹介し、両氏に自己紹介ならぬ“他己紹介”を促すと、塩田氏(33歳)は「福島さんは2012年11月に創業し、15年4月に上場してすごい方」、福島氏(28歳)は「アカツキは今年3月に上場して株価も好調」とお互いにコメント。
 続いて、それぞれ自社に関して「『世の中をワクワクさせ、感情にあふれた場所にする』をテーマに(モバイル)ゲームを制作して6年目。リアルな世界もワクワクさせたいので、6月にB Dash Venturesの投資先である『そとあそび』を買収し、ライブエクスペリエンス事業(旅行、遊びなど実体験の機会を提供する事業)にも進出している。将来はディズニーやグーグルのようになりたい」と塩田氏が大きな目標を描くと、福島氏も「スマートフォンのニュースアプリという領域で事業をしていている。今、1400万〜1500万台くらいにダウンロードされていて、アクティブユーザーも伸びている。学生時代に機械学習やアルゴリズムを研究し、検索したり、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で誰かをフォローするという方法ではなく、(もっと簡単に)ユーザーに合ったニュースを届けることが可能になるのではないかと思って創業した」と大学院在学中に起業を決意した動機を説明するとともに、「KDDIと新たなメディアサービスを開発・提供するなどして、さらに圧倒的なニューアプリにするように準備している」と塩田氏と同様に将来に向けた構想を広げた(右上の画像は右から渡辺氏、福島氏、塩田氏)。

 「投資は結婚に近い関係。しんどい時にも付き合ってくれる」

 この後、パネルディスカッションのテーマが「若手経営者に聞くVCへの期待」であることから、渡辺氏が「まず、グロービス・キャピタル・パートナーズから投資を受けた塩田さんから」と発言を求めると、塩田氏は「最初は借り入れでやっていたが、15億円くらい調達したいということになって、グロービスから投資を受けた。出資してもらうのは結婚に近い関係で、創業した時からグロービスの担当者と知り合いで仲が良かったのが大きな理由だ。また、いろんな経営者、VCの関係者にヒアリングしたら、『グロービスはしんどい時にも付き合ってくれる』という声を多く聞いたこともある」と回答した。

赤字段階で投資するVCは寛容、大手の投資で社内が“大人”に

 一方、B Dash Venturesからも投資を受けたGunosyの福島氏は「B Dashとイーストベンチャーズは試行錯画像誤の赤字の段階で投資してくれ、その後、ジャフコ(JAFCO)や事業会社のKDDI、オプト、セプテーニから投資を受けた。事業会社の投資はシナジーとして効いてくる事業をともにするということで、わかりやすい」「 試行錯誤段階のベンチャー企業(VB)に投資をするVCは、会社の内にあるエコノミクスを見極め、理解してくれ、すごく寛容だと感じた」と渡辺氏を評価すると、渡辺氏は「(大手の)ジャフコが入ったことが大きかったように思う」と質問。福島氏も「最初(当社の)社内はエンジニアばかりで、学校のサークルの延長みたいな雰囲気だったが、ジャフコが投資してくれ、“大人”になった」と自社の発展段階に合わせて、それぞれのVCや事業会社が役割を発揮してくれた点を強調した(左上の画像は左=塩田氏、右=福島氏)。

「求めるコミュニティにつなぎ、上場のタイミングもアドバイス」


 さらに、「起業家はコントロールされるのが嫌いで、人格も含めて多種多様。一つのスタイルでなく、タイプを見画像極めて経営者の力を引き出してくれるとありがたい。グロービスは私が求めるコミュニティにうまくつないでくれた」(塩田氏)、「最近、スタートアップの環境が変化してきて、VCはボリュームのエコノミクスからユニット(その会社の1つ1つの事業)のエコノミクスを見極め、ビジネスモデルが真似される前に、速くお金突っ込むことが求められている」(福島氏)などのVCに対する要望とともに、「VCからの上場のタイミングに対するアドバイスが助かった」といった感謝の声も聞かれたが、最後に渡辺氏が「IPO(新規株式公開)を実現させるには、いろんな関係者が三位一体 四位一体になってシナジーを上げていくことが大切。遠慮しないでVBの経営者と向き合い、仲間としていっしょに大きな産業を創っていきましょう」と力を込め、パネルディスカッションを締めくくった。

各省庁・機関が連携してベンチャー支援、逆算方式で規制改革

 この後、経済産業省の中石斉孝 大臣官房審議官(経済社会政策担当)が「アベノミクスの成長戦略は進んで画像いるのか。」をテーマにプレゼンテーション。「日本再興戦略 2016 これまでの成果と今後の取組」、「Venture Challenge(ベンチャー・チャレンジ)2020」と題した資料などを配布して、安倍政権が取り組む農業、医療、外国人の在留資格、交通/運輸、ベンチャー支援などに関して解説した。
 中石氏は特に、こうした問題を通じて、安倍政権は従来の教科書、歴史を変えようとしている旨、前置きして、農業では「米の生産調整(減反政策)は2018年から廃止。2014年は10代から40代までの新規就農者が2.2万人増えた(平成19年以降最多)。昨年の農林水産物・食品の輸出額は7451億円と過去最高。農業はコストセンターからプロフィットセンターに変わりつつある」。また、医療では「20年にID(本人認証)制度が本格運用し、新しい医療情報基盤になり、マイナンバーカードで、全国どのこ病院に行っても保険(証)の確認ができ、(一定地域内の)病院のグループ化もされるなどドラスチックに変わっていく」「20年には高速道路等での無人自動走行ができるようになり、18年までにはドローン(無人小型飛行機)による荷物配送も可能になる」と報告。外国人高度人材の永住権や介護、家事支援分野などのサービス分野での在留資格への対応に関しても説明した。
 また、「ここまでに法律が施行されないと、需要を逃してしまう。世界に負けてしまうというバックキャスト(逆算)画像方式で規制改革に取り組む」「各省庁・機関が連携するとともに、皆さんのような民間の人材に参加いただくアドバイザリーボードを設けてベンチャーを支援する態勢を強化している」とスライドなどで表示。「産業競争力強化法により、アウトかセーフかわからないグレーゾーン解消も進めている」と強調。「構造改革は長期戦だが、皆さん、改革の波に乗って、どんどん投資して下さい」と訴えた(中石氏の顔写真は2段下に)。

 仮屋薗会長-「皆様が尾ア・前会長の遺志に共感し、会員増」

 この後、懇親会に移行。JVCAの仮屋薗会長が「昨年7月に尾ア一法・前会長(昨年4月7日逝去)からバトン画像を渡され、『JVCAが日本における新産業と雇用創造の核になって欲しい』という遺志を受け継いで活動してきた。皆様も遺志に共感してくれ、この1年間で会員が120から160社(者)に増えた(ベンチャーキャピタル会員57社、コーポレートベンチャーキャピタル=CVC会員19社、賛助会員50社、賛助個人会員37名の計163)。また経済産業省には(米国スタンフォード大学で昨年10月に開催された)日米VCカンファレンスへの参加やVCファンドのパフォーマンス評価に関わる調査の受託で支援を受け、金融庁にも金融商品取引法の改正に関して、VCはイノベーションを担う業界で、これを担保してもらうように働きかけた。15期も皆さんのご協力をいただきながら活動したい」と力強く挨拶した。

数も増えて大同団結、エポックメイキングな年に-経産省も応援

 また、プレゼンテーションした経済産業省の中石氏は画像来賓として改めて、「私は日本VC協会の一回目か二回目の総会の懇親会に参加したが、当時は熱気はあったが、キャピタリストではない(銀行員のような)発言が聞かれ、プレーヤーも足りなかった。たが 日本の成長戦略を担う(大きな柱である)第4次産業革命はベンチャー活躍の舞台。協会は数も増えて大同団結し一枚岩になっている。今年はエポックメイキングな年になるのではないか。我々も全力で応援したい」と挨拶した。

金融庁−成長マネーで日本発世界に通用するフィンテック企業を

 また、金融庁総務企画局の中島淳一 審議官(企画・市場担当)は、懇親会に招かれたことを感謝するととも画像に、「麻生(財務)大臣〈副総理、内閣府特命担当大臣(金融)〉とアベノミクスによって、金融庁は金融育成庁になり、成長マネーの促進を大きな柱に据えている。金融商品取引法が改正され、3月に施行されたが、ファンドに関して厳しくなった部分もあるが、出資者の範囲を広げるなど全体として成長を促すような内容になっている。日本発・世界に通用するフィンテック(FinTech)企業をつくれないかと「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」を設け、仮屋薗会長にも参加いただいているが、地域経済の活性化のためにもVCが成長マネーを供給していくことが大事。金融庁は皆様方と距離が近く、お互いに協力していきたい」と挨拶した。

年金管理法人-PE・VCの担当者募集,生きの良い企業を東証に

 続いて年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道 理事兼CIO(最高投資責任者)が「昨年もこの場で、世界から見た日本のVC協会の存在感をつくることと、リスク・リターンの検証をするためのデータの整備を画像お願いしたが、両方とも進んでいる。当法人はオルタナティブ投資の検討をしているが、なかなかVC投資を認証するところまでにはいたっていない。しかし、プライベートエクイティ(PE)担当者募集と書いていたのを、つい最近、PE・VCの担当者募集に変えるなど、皆様の業界の盛り上がりに貢献したいと思っている。皆さんがどんどん新しい企業の成長を支援して、生きの良い企業を東証に送り込んでいただければありがたいと思っている」と声を高めて挨拶し乾杯の音頭を取ると、会場に活気ある懇親の輪が広がった。
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ジャフコ等の加入は画期的,国の研究機関や大企業からの独立も

 総会では仮屋薗会長をはじめとする協会の専務理事、常務理事、理事らの陣容が決まりましたが、懇親会で画像中締めの挨拶をした赤浦徹インキュベイトファンド代表パートナーは「(日本VCの最大手と言ってもいい)ジャフコが入ったことは、まさに協会にとって歴史的なこと」と“断言”しました。まさに筆者(松浦)もそう思います。同時に、やはり大手VCのSBIインベストメントも加入しています。
 特にジャフコは1973年4月の設立で、前年の72年に設立された2つのVCがその後、解散したり買収された関係で、実質的に日本VCのパイオニアでもあります。
 大手VCではSMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタルなどが未加入で、このうち、SMBCベンチャーキャピタルは親会社グループの合弁解消という影響もありますが、いずれにしても、日本で活動する多くのVCが協会に集まることが、日本のおけるVCの存在感を高めることになるのは間違いありません。
 会場で参加者にパネルディスカッショの感想や最近の動きを聞くと、「起業し事業を成長させた経験のあるアントレプレナーがVCをつくり、VBを支援することも重要」「国の研究機関や大企業に勤めている人で、起業しようという人が増えている」といった答えが返ってきました。

ファンド組成額-1720億円(813億増)、8月にVC等の集積フロア

 一般財団法人 ベンチャーエンタープライズセンター(理事長・市川隆治氏=JVCA専務理事、新宿区)が5月に発表したVC投資動向調査によれば、2015年度の日本のVCによるファンドの組成額は1720億円で、前年度比べて813億円も増え、ベンチャー企業が生まれ成長するエコシステムの整備も進展しています。
 さらに日本VC協会は8月15日に東京都港区赤坂のアーク森ビル3階に移転しますが、この3階には、すでにB Dash Venturesとインキュベイトファンドという独立系VC2社が入居し、上階にはCVCのNTTドコモ・ベンチャーズも本社を置いています。
画像 3階は特に「KaleidoWorks(カレイドワークス)」と名付けられ、オフィスエリアと交流の場の「Crossover Lounge」で構成されるということです。さらに多くのVCが集積し、日本の“VCヴィレッジ”“VCロード”になることを期待したいと思います。



     日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
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〈JVCAのことは、このブログ「ベンチャー温故知新」にたくさん書いています。最近では2月9日に「シルバーも『Never to Late』野心を持て!……」を掲載。昨年の総会の様子は15年7月15日の記事に書いています。併せて、参照して下さると幸いです〉
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