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zoom RSS TAMA協会が第9回産学官金サミット-「継続すれば成功につながる」-ブランド認定企業が事例報告と議論

<<   作成日時 : 2016/08/02 19:15   >>

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個人と個人の情熱のぶつかり合いこそ…産学連携は組織として

 一般社団法人 首都圏産業活性化協会(略称・TAMA協会、会長・吉田善一氏=東洋大学 研究推進部 部長、本部・東京都八王子市)は7月27日、 東京農工大学、西武信用金庫と共同して、同大学の小金井キャンパスで画像「第9回TAMA産学官金サミット」を開催した。サミットでは、協会が第四期5ヵ年計画(2013年度〜17年度)の一環として取り組んでいるTAMAブランド認定企業の公募が同日から開始されたことが説明されるとともに、13〜15年度の3年間に同ブランドに認定された71社のうちの8社の経営者らが自社の事例を報告したり、産学連携をテーマにパネルディスカッション。特に「私の辞書に失敗という文字はない。継続すれば成功につながっていく」「本当のワクワクする関係は個人と個人の情熱がぶつかるところから始まる」など、中小製造業経営者の志、思いにあふれた主張が聞かれる一方、「産学連携は透明性のある『組織』対『組織』の関係で進めるのが基本だが、産学連携には、こうすれば正解という“ひな形(型)”はない」といった課題も指摘されるなど、幅広く熱い議論が交わされた(サミットは経済産業省 関東経済産業局、東京都、埼玉県、神奈川県、日刊工業新聞社、日本経済新聞社多摩支局が後援)。

基礎研究はもちろん社会に役立つ形にできる人材を育成し貢献

 サミットは最初に、東京農工大学の松永是(ただし)学長画像が「本学は農と工からなる唯一の国立大学で、『持続発展可能な社会の実現』に向けた課題を正面から受け止め…世界の平和と社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献する…」のを基本理念にしている旨、参加者に語りかけるとともに、「この理念に則り、産学連携の重要性を認識し、基礎研究はもちろん、実際に社会に役立つ形にすることができる人材を育成している」「中小企業を含めた産業界との共同研究(「常勤教員あたり共同研究費受入額」など)もいつもトップ5くらいに入っている。皆様と環境、資源エネルギー、人口、食糧などの世界的な問題の解決に向けて邁進したい」と開会の挨拶をした。

「オールTAMAの総合力を発揮し、世界のものづくりをリード」

 次いでTAMA協会の吉田会長が「私は奥村次徳 前会長の退任に伴い、6月29日に会長を仰せ付かったばか画像り」と前置きして、「TAMA協会は平成10年(1998年)に1都2県(埼玉県、神奈川県)にまたがる地域の企業、大学、自治体、金融機関のネットワークを活用して、イノベーションを創出しようと設立された。現在推進中の第四期5カ年計画は第三期の『環境配慮ものづくりを継承している」「さらに10年後に向けて“先議後利”の精神で、オールTAMAの総合力を発揮し、世界のものづくりをリードしていきたい。そのためにも、このサミットで、『他の企業の模範となる企業』を認定するTAMAブランド事業を世界に発信していきたい」と参加者に呼びかけた。

3本の矢と多様性重視で持続可能性と企業、経済の成長を両立

 また来賓を代表して挨拶した経済産業省 関東経済産業局の藤井敏彦 局長も「6月の中旬に(局長を)仰せ付画像かったばかり」と前置きした後、 「TAMAブランド事業は大きな取り組みで、認定された企業は世界への切符を手に入れることができる」「協会の3本の矢、柱は良いものを造る(産学連携・研究開発)、売る(販路開拓・海外展開)、人材(育成・確保)の支援で、多様性も大事にしながら、持続可能性と企業が伸びていくこと、経済が成長することを両立させていくのが社会的な課題だ」と力説。「TAMA協会は、その面でも先導的な活動をしているが、経済産業省もさまざまな支援策を用意しているので、皆さんとともに課題の解決に向かって前進していきたい」と述べた。

イノベーション、連携、GNT、環境配慮などに挑戦する企業を公募

 次いで協会の事務局から第4回TAMAブランド企業認定の公募に関する説明がされた。
 それによれば、第四期5カ年計画の最初に@イノベーション志向Aローカル連携・グローバル連携の推進Bグローバルニッチ市場でトップシェアを目指す「GNT」企業の創出C環境配慮ものづくりDビジネスの自立循環・エコクラスターの形成−−の5つで構成されるTAMAブランド宣言を策定。その実現にチャレンジする中小企業を画像「TAMAブランド企業」として認定している。
 認定されると英字の認定証が発行されるとともに、認定企業の中から5社を大賞、3社を特別賞として選定し表彰。大賞企業には西武信用金庫から副賞(賞金)が授与される。また、認定企業は協会のホームページの特設サイトに掲載されるのをはじめ、マスコミにも取り上げられる機会が多くなるとして、フジサンケイ ビジネスアイに載った表彰式の記事を例として紹介するなど、認定企業になることのメリットを挙げ、「今年度の公募は10月5日までで、是非、多くの企業に応募を」と訴えた。

世界の大きな展示会活用、現地で人気のキャラクターの版権取得

 この後、昨年度に認定された24社のうちの5社の「サクセスストーリー」が報告された。海外展開、人材活用、地域連携、環境配慮などの事例で、最初に報告した株式会社狭山金型製作所(埼玉県入間市)の大場治 代表取締役(以下、社名の株式会社は略。肩書は資料の表記による)は「サクセスストーリーではなく、現在進行中の画像取り組み」と断ったうえで、「『KANAGATAを世界語に!』して外貨を稼ぎたい」とスライドで示すとともに、「ISO(国際標準化機構)の規格を取得して世界の大きな展示会に出展し、12年にはシンガポールにジョイントベンチャーを設立した。1人当たりのGDP(国内総生産)が高い国をターゲットにしている」と明快な口調で説明した(右上の写真)。
 また、映画やアニメーションのキャラクターなどのフィギュア・プラモデルのメーカーである壽屋(東京都立川市)の海外営業部 篠田順司氏は、「当社は今年が64期目で、15年くらい前から海外でも販売している。これまでは欧米中心だったが、最近はクールジャパンの流れにも乗って、南米、アフリカ、オセアニア、東南アジア、インド、中東などに販売地域を広げている」と事業環境が追い風である点に触れながら、「最初は日本では有名でも、その国では知られていないキャラクターを扱ったことや中間流通の問題などがあり、売れなかった。そこで、現地ファンに知名度があるキャラクターの版権を取得し、大型のチェーンストアで販売することなどで、売り上げを伸ばした」「これからもクールジャパンの名に恥じない商品の開発に挑戦していきたい」と強調した。

OEMとPBで高いシェア、地域連携で「美と平和の親善大使」招待

 一方、モノとヒトを核に話したのが、ゴム紐(ひも)を製造するイノウエ(相模原市緑区)の佐藤佳孝 専務取締役で、「2代目社長がゴムをリング加工してヘアゴム(髪を束ねたり、飾ったりするゴム)というオリジナル商品を開発した。多彩な色と種類のバリエーションを取り揃え、OEM(相手先ブランドによる生産)、PB(プライベートブランド)商品として供給し、シェアも高い」「これを担っているのが、内職の女性で、ヘアゴムの製造は難しいところもあるが、人と人のつながり、コミュニケーションを大事にして、繁忙期にも(気持ち良く)協力してもらっている。また内職の人の中から社員として採用もしている」と具体的に解説した。
 それに対して地域連携で成果を挙げているのが、やきとり、焼きトン(豚)を製造し、飲食店も運営するひびき画像(埼玉県川越市)で、社長代理の宮原正貴氏が2014年秋に川越style倶楽部のメンバーと協力して、ミス・インターナショナル世界大会に出場する80カ国の代表を「美と平和の親善大使」として川越、日高、東松山の各市に招いたことをスライドに映す(左上の写真)とともに、(13年に)東京・大手町に全国「7大やきとりタウン」のやきとりを食べることができる「全や連総本店 東京」を開店したことや「全国やきとり連絡協議会」が毎年、各地のやきとり店が集まる「やきとリンピック」を開催していることに言及。「10回目となる今年は10月1、2日に長野県上田市で開催するので、参加を」と呼びかけた。

独自の装置開発し、省エネ工場で顧客の要望に応え士気も向上

 最後に報告したのが、東新プラスチック(東京都八王子市)の高橋誠 代理取締役で、「当社は50年以上の社歴画像があり、お客さんが海外に進出して仕事が減って、どうしようと思ったこともあった」と振り返りながら、「プラスチックは水分やガスを吸ったまま成形(型)すると劣化を起こしたりする。熱乾燥をしないでガスや水を抜いて成形できるシステムを開発したことで熱源が不要になり、段取りの時間も短くなった。また成形機を油圧からサーボモーターに変更し、3年前に建設した新工場は建物が以前の工場の5倍。機械も増えたが、屋根にソーラーシステムをつけた省エネ工場で、お客様の要望に応えることができ、働く社員の士気も上がった」と力を込めた。

オープンイノベーションで中小企業が互いの強みを生かす時代

 この後、電気通信大学 研究推進機構産学官連携センター長の中嶋信生氏をファシリテーターとするパネルディスカッションに移行した。
 パネリストはエリオニクス(東京都八王子市)の岡林徹行 代表取締役社長、ソーケンメディカル(東京都豊島画像区)の石渡弘美 代表取締役 、トックベアリング(東京都板橋区)の吉川桂介 代表取締役社長、東京農工大学 先端産学連携研究推進センター 特別招へい(招聘)教授の仙波秀志氏の4人。3社はいずれも「TAMAブランド大賞」に選ばれた企業で、最初に中嶋氏が「これまで日本の企業は、自社で一気通慣で製品開発をしてきたが、国際競争に勝つためにオープンイノベーションが重要になってきた。中小企業はお互いの強みを生かすという意味で、時代に合っているのではないか」と指摘しながら、仙波氏に「産学連携の現状」について聞くと−−(左上の写真は右から岡林氏、石渡氏、吉川氏、仙波氏、中嶋氏)。

産学連携は透明性と知的資産管理が重要、だがマニュアルなし

 仙波氏は「6月に文部科学省から研究推進センターに来たばかり」と自己紹介した後、「日本では1990年代初めから産学官連携の施策が整備されてきて、大学に共同研究センターが設置され始めた。さらに90年代後半か画像ら米国の影響を受けて、日本版TLO(技術移転機関)や日本版バイ・ドール法(政府の資金による研究開発を受託した企業に、その研究開発に係る知的財産権を帰属させ産業競争力を強化する法律)などが整備されてきた」と解説。
 文部科学省の「イノベーション実現のための財源多様化検討会(平成27年12月18日)」の資料を引用して、「産学連携は個人(教官)と個人(企業の担当者)の関係ではなく、透明性のある『組織』対『組織』として共同研究を進めていくのが重要で、連携する前に連携の範囲、発明の帰属、利益、学生の関与などを決め、知的資産をきちんとマネジメント(管理)することが必要だ」と強調。併せて、「農工大の先端産学連携研究推進センター(URAC)は学長が本部長、理事(学術・研究担当)・副学長がセンター長で、企業との研究開発の橋渡しで成果を挙げ、女性研究者の活躍促進にも取り組んでいる」と説明しながら、「産学連携はマニュアル主義では出来ない!」「これをやれば正解というのはない!」と訴えた(右上の写真は仙波氏=右、中嶋氏=左)。

産学で特許を共同出願、世の中・社会のためが研究開発の原点

  一方、企業の側からは最初にエリオニクスの岡林氏が「当社は電子・イオン等を利用したナノ(10億分の1)スケールでの加工・観察・測定装置を開発・製造している」と自社を紹介した後、「物質表面に働く微小な力を計測する装置」を東京大学の協力で製品化したり、大手企業を退社した技術者に入社してもらうとともに、大学や工業高等専門学校などの協力により、「高感度・高精細電子線レジスト」の開発を手掛けた例を挙げ、「測定装置画像は契約のない形の協力だが、国内外の特許は共同出願した」「レジストは、その技術者が独立して研究を続けている」と説明した。
 また、電気磁気治療器などの医療機器を開発・製造するソーケンメディカルの石渡氏はまず、「研究には強力なモチベーションが背景にある」として、「30年以上前、(生後間もなく病気を発症した)私の兄のために父(石渡弘三氏、先代・創業者、故人)が勤めていた会社を退職し、治療器の開発・承認に挑戦したことから当社は始まった。世の中、社会のためが研究開発の原点」と力説した後、「TAMA協会とお付き合いする前は、医療機関や大学などの研究者らとの人間関係のみを頼りに試行錯誤しながら研究してきたが、最近は大学(筑波大学、電気通信大学、埼玉大学など)と二人三脚で研究開発を進めることができるようになった」とTAMA協会を高く評価した(左上の写真は右から、石渡氏、岡林氏、吉川氏)。

共同研究で学生が入社し主力社員に、将来に向け何ができるか

 一方、樹脂製のベアリングメーカーであるトックベアリングの吉川氏は「他社が作れない“これまでに無い動き”の製品が強み」と自社の特徴を紹介した後、千葉工業大学や秋田県立大学など4つの大学との連携事例をスライドで表示しながら、「千葉工大と共同開発したベアリングは、今は売り上げへの寄与度が低いが、学生が入社画像して主力社員に成長している」「秋田県立大とは腎臓病透析患者向け低カリウム野菜の栽培法の研究に取り組み、特許を取得したので4社でライセンス生産を継続中」と自社の事業以外の面で成果があったことを明かした(右上の写真)。
 こうした産学連携の成果に関連して、石渡氏は「私の辞書には失敗という文字はない。継続すれば成功につながっていくという信念で開発に取り組んでいる。短い期間で業績を上げるより、将来に向かって(例えば)高齢化社会に対して何ができるかと考えることが大切」と強い口調で提言。岡林氏と吉川氏はそれぞれ、「大学との共同研究は先生の指導により学生が担当することも多いが、言われたことしかやらない学生もいれば、自ら『こういうことをやれば良いんだ』考える学生もいる。学生とよく打ち合わせをすることが大事」、「よく考えてスタートすることが重要」と自らの経験を踏まえて話した。

個人対個人の発展形を-高額装置も教員の人脈と知識も活用

 また、会場から「『組織』対『組織』のあり方」や「TAMAブランドの認定によって実際に産学連携が前進したか」といった質問が出されたのに対して、「個人対個人をベースにした発展形はないかと考えている」(仙波氏)、「いままでとは違う他の大学とも共同研究ができるようになったが、特に当社は小さな会社で、以前は社員にブランド意識がなかったが、認定されたことで、ブランドを生かして研究しビジネスをしなくてはと考えるようになった」画像「本当のワクワクする関係は個人と個人の情熱がぶつかるところから始まる」(ともに石渡氏)とパネリストが回答。
 岡林氏はさらに、TAMA協会の活動に関連して「協会のイベントやインターンシップなどで大学の先生方と話をする機会があるので、そうした時に何を研究されているのか聞くとともに、会社に来ていただいて装置を見ていた画像だき、自由に議論するようにしている」とスライドで提示。
 最後に中嶋氏が「大学は最先端の研究をし、高額な測定器も置いている。産学連携により、そうした装置も使えるとともに、教員とコミュニケーションを重ねていけば、教員の人脈と知識を活用できる。産学連携関係の人間は敷居が低い」と参加者に大学の活用を促すと、仙波氏が改めて、「産学連携は千差万別、ひな形(型)はなく、地道な努力こそ大切」と強調しパネルディカッションを締めくくった。

信頼関係を構築し切磋琢磨して、世界に通用する製品・技術を

 この後、「TAMAブランド認定企業が『Greater Tokyo TAMA』において、ロールモデルを発信する動きが加速してきた……一歩深く踏み込んだ連携を図るとともに、粘り強くコミュニケーションを重ね……相互理解と信頼関係を構築し、切磋琢磨しながら、世界に通用する製品・技術の開発を強く推し進める」を骨子とする大会宣言が発表され、サミットは幕を閉じた。
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〈大会宣言の後、懇親会が開かれましたが、筆者(松浦)は都合で参加できませんでした。TAMA協会のイベント画像の取材はすみません、久しぶりで、このブログ「ベンチャー温故知新」に書くのも、久しぶりになります。産学官金サミットに関しては、第6回「TAMAブランド大賞等に8社−グローバルニッチトップを目指そう」を2013年12月03日に、第4回「『ものづくり大賞』等に10社……」を同11年11月26日に掲載しています〉

  日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
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