松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

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zoom RSS JSTとNEDOが「イノベーション・ジャパン2016」-失敗を許し信念と努力で挑戦する企業文化を創出

<<   作成日時 : 2016/08/30 17:54   >>

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500を超える大学、大企業、中小・VB等が研究成果を展示・発表

 国立研究開発法人 科学技術振興機構(略称・JST、理事長・濱口道成氏)と国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、理事長 古川一夫氏)画像は8月25、26の両日、東京ビッグサイト(東京国際展示場)で、「イノベーション・ジャパン2016 〜大学見本市&ビジネスマッチング〜」を開催した(共催・文部科学省、経済産業省)。今年で13回目となる国内最大規模の産学マッチングイベントで、全国から500を超える大企業、中小・ベンチャー企業(VB)、大学等が出展。研究開発成果の展示・発表をはじめ、セミナー、ショートプレゼンテーション、大学発ベンチャーの表彰式など多彩なプログラムが実施され、参加者の高い関心を集めた。こ画像こでは、そうしたプログラムのうち、25日に開かれた「Tech系ベンチャーが成功するための『鍵』」をテーマとするセッションを中心にリポートする〈同様のセッション「Tech系ベンチャー創出を加速する『鍵』」も開かれましたが、すみません、筆者(松浦)は都合で、「成功するための『鍵』」のほうしか取材できませんでした。「加速する『鍵』」の講演者は後段に掲載。右上の写真は東京ビッグサイトの入り口広場〉。

ハードテックVBは実験、改善のサイクルを速め、一気に成長を

 「Tech系ベンチャーが成功するための『鍵』」では、500 Startups Japan(本社・東京都千代田区)の澤山陽画像平マネージングパートナー、株式会社三次元メディア(滋賀県草津市、以下、社名の株式会社は略)の徐剛 取締役代表執行役社長(立命館大学情報理工学部 教授)、および、NEDO イノベーション推進部の伊吹信一郎主任の3氏がそれぞれ、スタートアップを支援するベンチャーキャピタル(VC)、大学発ベンチャー、公的研究機関のベンチャー支援責任者の立場から講演。「ハードテックベンチャー(VB)は実験、改善のサイクルを速め、一気にスケールアップすることが必要」「ずっと資金ショートとの戦いだったが、信念と努力でイノベーションに取り組み続けたい」などの発言が聞かれ、まさに技術的なブレイクスルーに挑戦するベンチャーに求められる戦略や創業経営者(起業家)の志、意気込みが強く感じられるセッションとなった。

500 Startupsは「最もアクティブなシードVC」-60カ国超で投資

 最初に講演した澤山氏は、まず自身の経歴について、「(東京大学大学院 工学系研究科 原子力工学の修士修了、学士はコンピュータシミュレーションで)ソフトウェアのエンジニアとして仕事をした後、J.P.モルガンで国内画像大企業のM&A(合併・買収)のアドバイザーをし、野村証券でIT(情報技術)ベンチャーの調査とIPO(新規株式公開)支援業務などを経験して、2015年12月に500 Startups Japanが設立されるとともに、マネージングパートナーになった」と紹介。
 その(米国を本拠地とする)500 Startupsは「世界で最もアクティブなシード〈ビジネスの種(タネ)や創業の段階で投資し支援する〉VCで、実際に設立6年目で、すでに投資先は60カ国超・1500社を上回る」と強調するとともに、「シードVCはリスクが大きいので、小さな投資をたくさんして、成長した企業に追加投資するのを基本方針にしている」と説明した。

今年2月からJapanファンドの投資開始、日本では以前から活動

 澤山氏は具体的に「ベンチャー企業が時価総額1000億円以上の『ユニコーン』になる確率は0.15%」と話を続画像けながら、500 Startupsの投資先でユニコーンになったのは3社、100億円以上の「ケンタウロス」は40社近く、10億円〜100億円の「ポニー」は300社を超えていると報告。こうした幅広い投資ができるのは、「世界中からいろんなバックグラウンドを持った130人を超えるメンバーが参画しているからだ」と解説した。
 また「米国にメインファンドを置き、10地域と3つの領域(産業分野)に数十億円程度のマイクロファンドをつくっている」「Japanのファンドは30ミリオンドル(約30億円)で、初期投資1000万〜5000万円、追加投資5000万〜1億円をメドとして今年2月に投資を開始し、これまでに6社ほどに投資をした」と述べるとともに、「その前にIT・テクノロジーを中心に日本で累計20件以上の投資をしている」と投資先の1部をスライドに映した。

日本の風向きは変わりつつあるが、米国のVB投資額は約70倍

 こうした日本の投資先の中にはハードテックベンチャー(VB)もあり、「アプリケーションやソフトウェアだけでなく、ブレイクスルーを必要とする技術も組み合わせて、まだ解決策がわからない課題にチャレンジするのがハー画像ドテックVBで、実験して改善していくというサイクルを速く回して、一気にスケールアップし、大きな価値を創っていくことが求められる」と主張した。
 そうした例として澤山氏は、米国のテスラモーターズやスペースXの経営者のイーロン・マスク氏とともに、日本の経営者、企業も挙げ、「日本でも2015年に100億円超の資金調達をしたVBもあるなど、風向きが変わりつつある」としながらも「日本全体のVBに対する投資額は約1.2ビリオンドル(B$、1200億〜1300億円、本文最後部の※参照)だが、米国はVC投資だけで48B$で、エンジェル(個人投資家)の投資を加えると日本の約70倍。我々も日本のハードテックVBが海外で資金を集める支援をしたい」と力説した(右上の写真=イノベーション・ジャパン2016には多様な分野の研究成果、製品が展示され、多くの人で賑わった)。

「顧客と課題、経営チームの構築も大事」-マッチングの場を提供

併せて、澤山氏は「ハードテックは技術を出発点にしているが、大事なのは顧客と課題」とスライドで提示。最後画像に「共同創業者や経営、事業に取り組むチームの構築も重要だ」と指摘して、「我々も起業の道を模索する人に月1回『Founders Friday』というマッチング(出会い)の場を設けているので活用を」「シリコンバレーで得たノウハウを生かし、日本でもイノベーションエコシステム(育成が循環的・連続的に行われるシステム)を構築したい」と訴え、話を締めくくった。

産業ロボット用3次元ビジョン開発、常に顧客からフィードバック

 一方、三次元メディアの徐社長は「当社は2000年12月の設立で、本社は立命館大学びわこ・くさつキャンパス画像の近くにあり、従業員は50人に近づいている。草津市の本社のほか、関東(さいたま市)と中部(名古屋市)に営業拠点があり、東京にも研究開発拠点をつくろうとしている」「産業ロボットの目(3次元認識)と脳(見た結果に基づき、制御する)の役割を果たす3次元ビジョン(センサ)『TVSシリーズ』の開発販売が主な事業」と画像自社を紹介(冒頭の写真)。
 これまでに経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポーティングインダストリー支援事業)とNEDOの開発助成などを受けて製品を開発・改良してきたと説明するとともに、「難しい製品なので、代理店になってくれるところがなく、11年に社内に営業部隊をつくった。営業といっても現場に入って、顧客といっしょにシステムを立ち上げ、お客さんからフィードバックをもらい、製品のレベルアップにつなげている」と製品改善のサイクルの一端を明かした(左の写真は大学発ベンチャーとして表彰された企業と経営者)。

毎年60%成長し国内の市場占有率は7割、大手メーカーと提携

 このサイクルが効果を挙げ、「これまでに自動車、自動車部品、電機、鉄鋼、食品メーカーなどに『TVSシリー画像ズ』を約150台販売。11年度より連続して前年度比、ほぼ60%成長し、国内の3次元ロボットビジョンの市場占有率は7割程度と推定され、国内外の大手ロボットメーカーと提携している」と徐氏は強調。併せて、2012年10月に「第5回ロボット大賞 中小企業庁長官賞」、15年8月に「第13回産学官連携功労者表彰 経済産業大臣賞」を受賞したと参加者に笑顔で語りかけた(右上の写真=イノベーション・ジャパン2016の会場では産学官連携功労者表彰の受賞者の展示もされた)。

「多額の開発費で、資金ショートとの戦い」−だが、VC投資も増加

 一方、「当社はハードテックベンチャーでハードもソフトも開発するので、多額の研究開発費を必要とする。その画像ため、ずっと資金ショートとの戦いで、補助金、VCからの投資、銀行融資など、あらゆる方法で資金を調達してきた」と声のトーンを変え、15年3月にオムロンベンチャーズ、豊田通商、SMBCベンチャーキャピタルから1億3000万円、16年5月に産業革新機構、未来創生ファンド(トヨタ自動車、三井住友銀行、スパークス・グループ等の出資により、昨年11月から運用開始)、三菱UFJキャピタルから7億円を調達したと説明しながら、「まだまだ足りないが、国からたくさん補助金をいただいてきたので、成功して恩返したい」と心意気を示した(左上の写真=会場には海外からの出展者も)。

何回もピボットしたが、初心を忘れず信念でイノベーションを継続

 さらに徐氏は「私たちは人類史上の技術革命の一部に取り組んでいる」と大きな将来像を描くとともに、「私の画像研究室から農業を変えようとする起業家も出ている」と他の分野にも研究成果が波及し始めていることに言及。「2000年に3次元モデリング技術で創業し、08年に3次元ロボットビジョンの開発を開始した。最初はソフトだけだったが、ソフト+ハードのシステムを開発するようになるなど、何回もピボット(バスケットボールで軸足を固定して方向転換すること)した」とスライドに自社の沿革を映しながら、「失敗を許し、チャレンジを奨励してイ画像ノベーションを続けられる企業文化を構築したい。初心を忘れず信念を貫徹したい」と力を込めた。
 徐氏は33年前に来日。大阪大学大学院修了の工学博士だが、最後に「成功までには、まだ長い道のりがあり、(こうして)講演する立場にはない」と前置きして、「NEDOの支援がなかったら、今の三次元メディアはない」と謝意を表して話を終えた。

NEDO−起業家候補、実用化開発、マッチングでTech系VBを支援

 そのNEDOの支援責任者として講演したのが伊吹氏で、「NEDOは起業家候補、実用化開発、マッチングなど画像にわたり、Tech系ベンチャー(VB)をシームレスに支援している」とスライドに映しながら、それぞれの支援を受けて成長したVB6社を挙げた。
 具体的に支援事業とVB〈社名の株式会社は略、()内は開発している技術、主要事業〉を列記すると――。

◇起業家候補支援=フォトシンス(スマートフォンで鍵を開けるデバイス)
◇実用化開発支援=Spiber(スパイバー、クモの糸の人工合成など新世代構造タンパク質素材の量産化技術)、マイクロ波化学(マイクロ波でものづくりに革新)
◇マッチング支援=ユニバーサルビュー(屈折障害を改善する効果が期待されるピンホールコンタクトレンズ)、インキュベーション・アライアンス(グラフェン量産技術を応用し、自在に3D形状を作れる放熱シート)、三次元メディア(前の段参照)。

目的は大きな夢の達成−初の「オープンイノベーション白書」発行

伊吹氏はNEDOの支援を受けて上場した企業の時価総額が今年5月時点で、1兆円を上回ることもスライドに画像表示するとともに、NEDOイノベーション推進部が事務局を務めるオープンイノベーション協議会(会長・野路國夫コマツ会長)がセミナー、ワークショップ、VBによるピッチ(ショートプレゼンテーション)などの活動を積極的に推進し、今年7月には初の「オープンイノベーション白書」を出したことなどを説明。最後に、Tech系VBの「成功のカギ」として、@自社に合ったNEDOの支援事業の選択A技術とビジネスプランのバランスBチームアップ、役割分担C(支援策はあくまで手段で)目的は大きな夢の達成――の4つを挙げ、「さぁ、次の『扉』を開こう!」と呼びかけた。

VBは武器を磨き「扉」を蹴って開け、成功への「扉」に近づこう

 この後、同イノベーション推進部の久木田正次 部長が「『扉』を開いた先に見えるのは、また次の『扉』かもしれない。それはスマートに開ける必要はなく、蹴って開けてもいい。そのための武器を磨いて開けると、さらに向こうに成功への『扉』がある」と閉会の挨拶をして、セッションは幕を閉じた。
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画像 「Tech系ベンチャー創出を加速する『鍵』」の登壇者(右の写真参照)は開会挨拶=NEDO副理事長 宮本昭彦氏、以下講演=経済産業省 技術振興・大学連携推進課長 兼 NEDO室長 山田仁 氏、フォトシンス代表取締役社長 河瀬航大氏、INDEE Japan代表取締役マネージングディレクター 津嶋辰郎氏、NEDOイノベーション推進部 スタートアップグループ 主幹 吉岡恒氏。

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 ※ 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC、理事長・市川隆治氏)が8月10日に発表した速報によれば、2015年画像度の日本のVCの投資額は1302億円。120社のデータを集計(海外投資分も含む。詳しくは、同センターのホームページ)。

〈オープンイノベーション協議会の創立総会に関しては、このブログ「ベンチャー温故知新」の2015年02月17日の記事「NEDOが成果報告会−VBとVCが『危機克服』『世界初』など熱く討議……」に掲載しています。併せて参照して下さると幸いです〉
    日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
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