松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

アクセスカウンタ

zoom RSS 日本VC協会がメディアプレゼンテーション開催-「優秀な人は大企業ではなく、VBで世界に出て行く時代」

<<   作成日時 : 2016/10/05 13:34   >>

トラックバック 0 / コメント 0

日本発世界的VBを目指す経営者が討論、調達額も米国に近づく

 一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA、会長・仮屋薗 聡一氏=株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナー、東京都港区、以下、日本VC協会とも表記、社名の株式会社は略)は9月29日、アーク森ビル(同・港区赤坂)のKaleidoWorks(カレイドワークス)内にある「CrossOver Lounge」で、メディアプレゼンテーションを開催した。新聞、雑誌等のメディ画像アを対象に開いたもので、ベンチャー企業(VB)の資金調達額が「米国のサイズに近づいている」ことが説明されるとともに、人工知能(AI)や通信システムを使った独自のプラットフォームで“日本発の世界的VB”を目指す経営者らがパネルディスカッション。VBの経営者から「日本か米国のどちらで起業するか悩んだ」「優秀なエンジニアを採用するコストは日本のほうが安く、日本には世界トップの研究者もいる」など、国際的な観点からの発言が相次ぎ、日本がVBとVCを原動力に「優秀な人は大企業で働くのではなく、VBで世界に出て行く時代」に大きく転換しつつあることを強く感じさせた。

「VCを集め日本のサンドヒルロードに」−気軽に立ち寄れる場も

 日本VC協会がメディア向けプレゼンテーションを開くのは3回目で、最初に仮屋薗会長が8月に協会の事務局画像をアーク森ビル3階にあるKaleidoWorksのオフィスフロアに移転したことを報告するとともに、「同じフロアにVCのB Dash Ventures(B DASH VENTURES)、、インキュベイトファンドグリーベンチャーズが入居し、上の階にはNTTドコモ・ベンチャーズやVCを(グループ会社として)持つアイスタイルも入っていて、近くにWilもある。ここをVCが集まるシリコンバレーのサンドヒルロードのようにしたい」と将来構想を描きながら、「CrossOver LoungeはVC、VB、大企業、政府・官庁、メディアなどの人が気軽に立ち寄り、交流する場。是非、活用を」と訴えた。

VC、CVC会員は50社から80社に、地方創生を支援し国際活動も

 併せて現在、協会のVC会員が58社、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)会員が21社で、「1年前の7月画像に私が会長に就任した時はVCとCVCの会員は合わせて50社だったが、約80社に増えた。加えて、賛助会員も50社、賛助個人会員も37名いる」と団体としての存在感を高めている点を強調。
 具体的な活動として、ベンチャーエコシステム委員会、ファンドエコシステム委員会、オープンイノベーション委員会を核に、ベンチャーキャピタリストや中堅キャピタリストの育成・研修などに取り組むとともに、各地域のVCトップや関係者との懇談会を開いて地方創生を支援する一方、世界的な「VC Congress」やアジアの「VC&PE(プライベートエクイティ)Council」に参加するなど、幅広く活動していることを力説した。

ファンド組成は2600億〜3000億円…CVC、大学、地銀系等で動き

 この後、未公開ベンチャー企業の資金調達状況について、自ら調査しデータベース化しているジャパンベンチャーリサーチ画像(JVR、本社・東京都港区)の北村彰 代表取締役が発表するとともに、日本VC協会の村田祐介 企画部長(インキュベイトファンド代表パートナー)がコメントを付け加えた。
 北村氏によると、「今年(2016年)上半期のVCファンドのレイズ(組成)額は9月23付の集計で1621億円」。これに組成が予定されているファンドを加えると、年間で2600億〜3000億円になり、昨年の約2247億円、13年の2055億円を上回ると予想される旨、説明しながら、VCファンドの組成主体の内訳をスライドで提示(次の段の写真参照)。村田氏が「CVC、大学系、海外VC、さらには地銀(地方創生)系などで、大きな動きがある」とコメントした(右上の写真は北村氏=右、村田氏=左)。

1社の調達額(中央値)は1億円超、10億以上も増え、選択と集中も

 一方、上半期におけるVBの資金調達総額は928億円(6月末までのデータを8月20日時点で集計)で15年・1年間の1658億円の56%に上る半面、資金調達をした企業数は前年(同)の946社に対して373社で、北村氏が画像「投資の選択と集中が進行しているとみられ、1社当たりの資金調達額(中央値)も14年5100万円、15年1億円、16年上半期1億820万円と大型化している」「しかも3億円以上が増え、10億円以上調達したVBは13年に13社だったが、14年27社、15年35社、16年は上半期だけで20社と増加している」と解説すると、村田氏が「50億〜100億円を調達したVBもある」と補足。両氏とも「米国と比べて、絶対数(VBの数)が少ないので、総額では及ばないが、1社当たりの投資額は米国に近づいている」としながら、「シード〈事業の種(タネ)の段階〉では資金が集まっても、次の段階では集まらないケースもある」といった問題点を指摘した。

事業会社の直接投資が増加、関東圏が7割超、分野別でも分析

 また、今年上半期は事業会社によるVBへの直接投資が増えていることや、企業の地域別資金調達額では、画像関東が71.4%で、09年の86.6%以降、逓減傾向にあるが近畿地方の7.7%と比べると極めて高いことなども明らかにされた。
 こうした全体の傾向とともに、JVRは15年度の経済産業省によるベンチャー創造支援事業の一環として、人工知能(AI)を使った「ベンチャーマップ」を開発し、VBの事業領域の把握・分類・更新に役立てていることから、北村氏はFinTech、ロボット、IoT、AIの関連分野ごとの調達額、社数なども分析し示したが、最後に両氏とも「ここ数年の間に組成されたVCファンドの投資が今年、進んでいくと予想され、日本のスタートアップの環境は良くなっている」と強調し発表を終えた。

 IoT、Big Data、AIで産業革命を支援-情報を収集・解析・可視化

 続いて行われたパネルディスカッションでは、B Dash Venturesの渡辺洋行 代表取締役社長(日本VC協会 画像理事)がモデレーターを務め、ABEJA(東京都港区)の岡田陽介 代表取締役社長(CEO/CTO=最高経営責任者/最高技術責任者)とソラコム(同・世田谷区、港区に赤坂オフィス)の玉川憲 代表取締役社長(CEO)の2人のVB経営者と意見交換した(冒頭の写真は右から渡辺氏、玉川氏、岡田氏。左上の写真は左=玉川氏、右=岡田氏)。
 最初に渡辺氏が「IoT、AI分野への投資が増えているが、2人はそのトップランナー」と前置きして、2人に自社の紹介を促すと、岡田氏は「設立して4年で、資本金は10億を超えている。IoT、Big Data、AIを活用して産業構造の変革、第4次産業革命をサポートするというストラテジーを掲げている。具体的には、さまざまな情報を収集・解析・可視化するクラウドサービス『ABEJA PLATFORM』を小売・流通業、製造業などに安いコストで提供している」「Cが付く役員は皆27〜28歳の若い会社だが、世界でもトップのコンピュータサイエンスやAIの研究者に顧問として入ってもらったり、共同研究をしている」とスライドに表示した。

セキュリティが高いモバイル通信プラットフォームを従量課金制で

 一方、玉川氏は「昨年(3月に)創業したが、私は40歳で、そのくらいの年齢でソフトウェア開発の経験者が集画像まっている。37億円ほどを調達し、1年前にモノ向けのモバイル通信プラットフォーム『SORACOM』を出したが、これは携帯通信キャリアの基地局を借りて、クラウド上に構築した管理システムに専用線で直結させているので、インターネットを介さず、セキュリティが高い」「従量課金のリーズナブルな料金で、SIMカードが入れば使うことができ、バスの位置情報の提供、小売業の客層分析、太陽光発電の監視、決済端末などに利用されている」と、やはりスライドに映して説明した。

人材、技術など日本の良さを活かし国際展開−採用コストも有利

 この後、渡辺氏が両氏に「調達した資金をどう使っているか」と質問。それに対して、玉川氏は「未来に向け、なるだけ早くグローバル展開するために投資していくことを重視している。クラウドを使って開発したソフトウェア画像は、どこでも使えるが、海外のお客様には現地で営業、サポートをして、顔が見えないと売れないので米国、欧州、シンガポールに子会社をつくり、スタートアップメンバーが入り始めている」と回答。
 岡田氏も「AIで一番重要なのは、どう大量のデータを集めるかで、バーチャルデータではないリアルデータを集めるために投資したい。特にアジア圏のデータを集めて、欧米に出ていきたい」と、ともに世界市場で勝負できるプラットフォームの開発を目標にしている点で共通する答えだった。さらに渡辺氏が「日本のVBの人材や技術力は米国と比べてどうか」と話を発展させると、両氏とも「日本でスタートするか、米国でスタートするか悩んだ」と語りながらが、「同じ(レベルの)優秀なエンジニアの獲得コストはシリコンバレーと比べて日本のほうがが安い」(玉川氏)、「シリコンバレーでは、AIエンジニアの人件費が高騰している。(AIのブレークスルー技術の1つとされる)ディープラーニングの原型の研究は実は日本人が始めるなど、日本にも優秀な人が多い」(岡田氏)と両氏とも日本の良さを活かして世界に出て行こうという姿勢でも一致。玉川氏は「東京は類い稀な企業の集積地域で、1日に8、9社の人に会える。シリコンバレーは車で回らなくてはならないので、8、9社は無理」と東京のメリットにも言及した。

VCと連携−米国NASDAQに上場する意気込みでチャレンジ

 最後に渡辺氏が「IPOやM&A(合併・買収)などの出口については、どう考えているか」と質問を向けると、玉川氏は「Wilがリードキャピタルとなって投資を受けたので、米国の子会社はWilのオフィスを使わせてもらっている。短期間で株式公開してくれという要請は、それほどではない」と返答。
 渡辺氏が「成長して米国NASDAQ(ナスダック)に上場?」と重ねて聞くと、岡田氏が「創業時にインスパイア画像(インスパイア・インベストメント、東京都港区)から投資を受けたが、インスパイアは(ミドリムシなどの微細藻類を培養して燃料や食品に活用する)ユーグレナにも投資をしている。ユーグレナのような会社を目指し、ナスダックに上場する意気込みでチャレンジしたい」と力を込めた。
 こうした議論を受け、渡辺氏が「優秀な人が大企業で働かなくて、VBで世界に出て行く時代が身近になっている」と主張し、メディア向けプレゼンテーションは幕を閉じた(右上の写真はKaleidoWorksにあるJVCAのオフィス)。

            ◎         ◎         ◎
玉川、岡田、北村の三氏-経歴は異なるが、時代を先取りし起業

 「優秀な人が大企業で働かなくて、VBで世界に出て行く時代」−−今回のプレゼンテーションに登壇した2社画像のVB経営と北村氏の経歴を見ただけでも、そうしたことが感じられる。
 玉川氏は日米の大学院で機械情報工学、MBA(経営学修士)、ソフトウェア工学を修了。日本IBM基礎研究所を経て、アマゾンデータサービスジャパンで、日本市場の開拓に尽力。昨年、ソラコムを創業したが、外資系の会社で技術力を高め、ビジネスの経験も積んで独立したタイプ。
 岡田氏は1988年生まれで、小学校5年生の時からプログラミングを始めるなど、言わば、コンピュータの“申し子”で、大企業ではなく、VBに勤めてシリコンバレーに調査員として滞在。この時の体験をもとに12年9月にABEJAを設立したが、Cの付く経営陣が皆、88年生まれで、最近、こうした世代が共同してVBを経営するケースが増えている。
 一方の北村氏は日立製作所、日本IBMを経て、日本オラクル、日本グプタ、セールスフォース・ドットコム日本画像法人など多くのVBのスタートアップに携わり、社長も経験.して、2006年に前年から活動していたJapan Venture ResearchをNPO法人(特定非営利活動法人)化。11年4月には株式会社組織のJVRも設立したが、北村氏のような国際的な大企業とVBの両方の経験者がVC、VBを専門的に調査しデータベース化する事業に取り組んでいる背景には、時代の大きな変化があると筆者(松浦)は感じます。
 ABEJAとソラコムはともに、まだ新しい会社ですが、資本金は以前では考えられない額です。今回のプレゼンテーションでも指摘されましたが、そこにも大きな時代の変化があると思います(左上の写真は懇親会で語り合う岡田氏=手前左と呉 雅俊TNPパートナーズ代表取締役社長、元・日本VC協会 会長=同右、右上の写真はインキュベイトファンドのオフィス入り口)。
            ◎         ◎           ◎     
森 事務局長が退任-5年間、総会やイベントの進行も手際良く… 

5年間、JVCAの事務局長を務めた森 信和氏が9月末で退任しました。伊藤忠商事(グループ)の出身で、総会や今回のようなイベントを手際よく進行させていたことが強く印象に残っています。森さんは「しばらく静かにす画像る」と言っていましたが、今後も活躍して下さい。
  ◎     ◎ 
〈JVCAのことは、このブログ「ベンチャー温故知新」にたくさん書いています。前回のメディアプレゼンテーションの様子は2月9日に「シルバーも『Never to Late』野心を持て!……」として掲載。今年の総会の様子は年7月12日の記事に書いています。併せて、参照して下さると幸いです〉
日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
画像

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
日本VC協会がメディアプレゼンテーション開催-「優秀な人は大企業ではなく、VBで世界に出て行く時代」 松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる