松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

アクセスカウンタ

zoom RSS VECが「ベンチャー白書2016」-VCとCVC等の覆面座談会-ファンド設立ブーム…過去とは違う?

<<   作成日時 : 2016/12/17 19:53   >>

トラックバック 0 / コメント 0

「税金でなく民間に任せて…伝統的大企業は…」-現場の声収録

 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(略称・VEC、理事長・市川隆治氏、本部・東京都千代田区九段北)はこのほど、「ベンチャー白書2016」を発行した。VECが「我が国のVC(ベンチャーキャピタル)及びVB(ベ画像ンチャー企業、ベンチャービジネス)を幅広くカバーした唯一の報告書」と自負する白書で、日本で活動する(日本に法人格がある)121のVCから得られた回答をもとに、15年度のベンチャー投資の額、投資ステージ、回収(Exit)、パフォーマンス(運用実績)、ファンドの組成などの動向を集計して細かく分析するとともに、欧米やアジアのVCの動向やVBを取り巻く環境をリポート。併せて、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の設立(組成)をはじめとする「日本のVBと大企業との協働」や日本のVBの現状を報告し、課題を指摘している。
 特に今年の白書は、VCやCVC、大企業(の主に新規事業開発担当部署)からのヒアリングを通して得られた意見を、覆面座談会・仮想座談会形式にまとめて収録。「バリュエーション(企業価値評価額)の高騰で、早い段階で投資しておかないと採算が…」「税金は直接大学に入れればいい。税金でVC業務を行うべきではない。民間に任せて…」「新興大企業の場合は、最初から役員クラスが出てこられる……伝統的大企業の場合は…」など、投資やVB支援に取り組む現場の責任者・担当者の主張、率直な声が聞かれ、より深く日本のVB、VC、CVCの現状と問題に対する理解を促す内容になっている。
 
多くのVCが回答、IPO一覧や公的なVB支援策、資金調達リストも

 白書はA4判で、「T 分析編 ベンチャービジネスの回顧と展望」「U データ編 2016年実施 ベンチャーキャピタル等投資動向調査報告」で構成され、それぞれ266ページ、152ページの計約420ページ。2015年1月〜16年6月のIPO(新規株式公開)一覧や日本の政府・関連団体のVB支援策、さらには15年度のVBの資金調達リスト(VECが確認した情報による一覧)などもまとめられている。
 また、投資動向調査は163社を対象に行い、大手をはじめとする121社という多くのVCが回答している。

投資額は1300億円-11%増、国内874億円・18.%増、海外419億円

 簡単に15年度のVC等によるVBへの総投資金額や投資先地域などを見ると、投資額は1302億円で前年度比画像11.2%増加、件数は1162で同19.9%の増加だった。投資額は「リーマンショックの翌年度(2009年度)に底を打ち……回復傾向はみられるものの、2000年度〜2007年度間のピーク(2800億円前後)には達していない」
 投資額のうち国内向けは874億円で前年度比18.1%増と堅調、海外向けは419億円で前年度と同水準で推移(合計と内訳が一致しないのは、小数点以下第1位の四捨五入による)。件数は国内954、海外180(不明28件)で、一件当たりの平均投資額は国内向けが9200万円で前年度比9.8%減。海外向けが2億3300万円で同14.2%増。地域別では中国、インド、その他アジア、欧州、北米など多岐に渡る。

IT関連が額、件数とも5割超、シードとアーリーの初期投資6割強

 投資先の業種別(国内外合計)では、「IT(情報技術)関連」が投資額、件数ともに5割を超え、ステージ別では、シード(商業的事業がまだ完全に立ち上がっておらず、研究及び製品開発を継続している企業=VECの定義)が金額で11.5%、件数で18.6%。アーリー(製品開発及び初期のマーケティング、製造及び販売活動に向けた企業=同)が同51.3%、48.7%で合計すると、金額比率で62.8%と前年度の57.2%から増え、件数でも67.4%と同62.9%から増加した。
 
関東圏が8割、東京6割、近畿は1割、九州・沖縄4%−地方創生?

 国内の投資先を地域別に見ると、関東圏が78%(前年度は72%)、うち東京が62%(同65%)と圧倒的に多く、近畿地方は10%(同15%)と低下。九州・沖縄は4%から6%とやや上昇しているが、これを見る限りでは、ベンチャー企業はかなり一極に集中していることがうかがえる。

金額で独立系、件数で銀行系が1位-ファンド組成額は前年倍強

 VCの系列別投資額(国内)は「独立系」が297億円、件数では「銀行(メガバンク、地銀、信金)系」が351でトップ。ファンドの組成は51本、総額1932億円で、05年度の70本・2816億円、07年度の39本・2740億円には及ばないが、前年度の39本・911億円から大幅に増加、リーマン・ショック後の最高となった。

海外のVCを協会等のデータを基に解説、VBの動きもコラムで

 白書は海外VCの動向を米国のNVCA(National Venture Capital Association)、や欧州のInvest Europe、中国のChina VC/PE Market Review 2015(PE=Private Equity)などの公表データをもとに解説するとともに、「フィリピ画像ンのスタートアップ・エコシシテム」「シリコンバレーのイスラエル発スタートアップ事情」「熱きインド」「ベンチャー争奪 欧州各国、起業イベントが花盛り」「大学系VCが本格始動」「ベンチャー倒産、水面下で休眠も相次ぐ」などといった国内外の動きを40本近くのコラムでリポート。日本におけるVBと大企業とのオープンインベーション、コラボレーション、日本のVBの現状なども報告しているが、覆面座談会や仮想座談会には、2015年度の投資動向の特徴、傾向が反映されている。座談会のもとになったヒアリングをした時期は覆面座談会が16年4月下旬〜5月上旬、仮想座談会が同2月〜10月上旬。そのほんの一部を紹介すると――(左上のグラフはベンチャー企業を対象にしたアンケート調査による分析の一例)。

VCは有形化していないものを扱うが、大会社は見えるものしか…

 「ファンドレイズ(組成)は追い風だが、GP(General Partner=無限責任組合員、業務執行組合員)をできる運用者と起業家の数が足りていない」「VBの数は増えており、有力企業も増えている印象だ」「日本のVCのサイズはまだまだ小さい。(サイズを拡大しないと)日本から世界へ出ていくような大型企業の資金調達を支えきれない」「総じて、日本の大企業は、国内VBは買わないが、海外VBは買って高値掴みしている感がある」「アカデミアに資金が供給されたことは必要な取り組みだと思っている」「研究者=経営者ではない。VCがやれることは経営者がいなければ、経営者を連れてくること」「税金でVC業務を行うべきではない。民間に任せればよい話」「民間VCと上手く棲みわけができればよい」
 「CVCは『羹に懲りて膾を吹くグループ』と、『継続的に投資を続けるグループ』とに分かれると思う」「VCが大企業にVB案件を紹介する場合、新興大企業の場合は、最初から役員クラスが出てこられるケースも多い。これに対して伝統的大企業の場合は、最初は担当課長というケースが多い」「VCファンドは、イノベーションというまだ有形化していないものを扱う」「大手事業会社は見えるものしかジャッジできない…VBはイノベーティブなもの画像を追求するが、イノベーティブなものはすぐには使えない。これらの点を(大企業の)経営陣が、本当に理解しないと…。」「(CVCや大企業とVBは)互いに欠点をあげつらうのではなく…お互い…補完するという姿勢が…大切だ。VBは決して下請けではない。あくまでもパートナーだ」「大企業とVBの両方で働いた経験がある…人材はまだ少ない」
(右上の写真は昨年12月に開催されたVEC創立40周年記念祝賀会と 「ベンチャー白書2015」発表会。挨拶しているのは市川理事長。次の段参照)
            ◎           ◎         ◎
VEC-教育と労働市場の改革提言、大も中小も同一賃金に-筆者

 市川理事長は昨年12月の記念祝賀会・発表会で、「教育と労働市場を変えないとベンチャー企業を育てるエコシステムは回っていかない」と強調していましたが、今年の白書でも「転職は当たり前という社会にする。課題解決を手探りする教育に改革する」ことを強く提言しています。
 筆者(松浦)は長年にわたり、VB、VCを取材していますが、この提言に共感するとともに、大企業とVB・中小企業が真のパートナーになるために、創業したばかりのような特殊な事情のある時期は別にして、「企業規模に画像関わりなく、同一賃金」になるような仕組みに変革すれば、ダイナミックな“一億総活躍社会”に近づくのではないかと思います。
 VECは「白書2016」(冊子版)の前に、電子版(PDF)を10月3日に、ベンチャーニュース版(同)を11月2日に発行。冊子版はすべてを網羅した“完全版”で5000円+消費税。ベンチャーニュース版は、いくつか入っていない章・項目もありますが、VECのホープページで無料で見ることができます。
 また、四半期VC投資動向調査もベンチャーニュースに掲載されています。
     日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
           ◎            ◎            ◎
〈昨年12月のVEC創立40周年記念祝賀会・発表会の様子は、このブログ「ベンチャー温故知新」の同月07日の記事に書いています。併せて、参照して下さればと思います〉
画像

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
VECが「ベンチャー白書2016」-VCとCVC等の覆面座談会-ファンド設立ブーム…過去とは違う?  松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる