松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

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zoom RSS VECが「ベンチャー白書2017(電子版)」説明会-投資は増加傾向だが、国際比較では「見えない…?」

<<   作成日時 : 2017/11/14 17:55   >>

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日本を事業創造できる国に、VBと複数の大企業でコンソーシアム

 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(略称・VEC、理事長・市川隆治氏、本部・東京都千代田区)は11月8日、学士会館(千代田区)で「ベンチャー白書2017(電子版)」の説明会と懇親会を開催した。同電子画像版は今月末に出版予定の冊子版に先立って発行されたもので、国内外のVC(ベンチャーキャピタル)による投資動向、ファンドの組成、IPO(新規株式投資)やM&A(合併・買収)等によるExit(出口=株式売却)の状況をはじめ、VB(ベンチャービジネス=ベンチャー企業)に対するニーズ調査、VBと大企業とのコラボレーションの現状、VB支援者らによるコラムなどとともに調査データも網羅し、VECが「我が国のVC及びVBを幅広くカバーした唯一の報告書」と自負する内容で、今回は特に、「VBと大企業との事業創出を支援する」5社の代表者がプレゼンテーションした。5社はいずれも、自らがVBでもあり、「従業員の半数以上が博士人材で、技術シーズを事業として発展させる」「大手企業での開発と起業の両方の経験を持つメンバーで構成され、日本を事業創造できる国にして世界を変える」「7月に日本に法人を設立したが、1つのスタートアップ企業と複数の大企業とでコンソーシアムをつくり、スタートアップのアルゴリズムで事業を創造する。これこそがオープンイノベーション」など、熱のこもった主張が相次ぎ、日本のVB支援に新しい潮流が確実に起こっていることをうかがわせた。

国内は25%増、世界最大級のVB支援施設-“欧州の反転攻勢?”

 説明会は最初に、VECの市川理事長が日本と海外のVCの投資動向やVBのニーズなどについて解説。それによれば、「2016年度の日本のVC投資額は1529億円で、15年度の1302億円から順調に伸びている。このうち画像国内向けの投資額は1092億円(件数は1387)で、15年度の874億円(同1162)と比べると24.9%増。11年度から国内外を分けて調査をしているが、国内向けが初めて1000億円を超えた」(一部CVC=コーポレート・ベンチャー・キャピタルを含む115社が回答)。
 だが、米国の7.5兆円、中国の2.2兆円(2016年)と比べると「日本は見えないくらいで、もっと増やさなくては…」と課題を指摘した。
 一方、欧州の投資額(同16年)は0.5兆円で、国別ではフランスが約9億ユーロ(PE=プライベート・エクイティを含む。投資社数は644)と金額では日本とほぼ同じ規模だが、市川理事長は今年9月末にパリに行き、6月にオープンしたVB育成キャンパスの“Station F”を視察した時のことを例に挙げて、「廃屋だった貨物の駅舎をITの(富豪)起業家が改装し、3,000人の起業家が机を並べられる世界最大級の施設にした。イベントも開催できる」と“欧州の反転攻勢?”の一端をスライドで示した(2つ下の段の写真参照)。

VBは資金と人材を求める、3年連続でVBと大企業のコラボを特集

 また、VBを対象にした調査では、シード、アーリー、エクスパンションの各ステージ(成長段階)とも、資金調達と並んで人材採用に対するニーズが高く、とりわけ、レーターステージ(持続的なキャッシュフローがあり、IPO直画像前の段階等)では、「人材採用のニーズが高い」。その人材では、「営業・販売促進、戦略・事業開発、技術開発の担当者を求める企業が多い」と分析するとともに、「ベンチャー白書では、15年度〜(今回の)17年度の3年連続で『VBと大企業のコラボレーション』を特集しているが、今年はそれを具体化する支援会社が推進するCSAP=Corporate Sponsored Accelerator Program=大企業がVBに対して経営資源を提供しイノベーションを生むプログラム。VB、大企業、支援会社が共同して実施=の活動を詳しく掲載している」と強調した。
 (左上のグラフはVBの資金調達状況。白書の電子版から引用)

シリコンバレーの高校の先生によるイベント(和歌山市)も支援

 併せて、「大学関係者等へのヒアリング、アンケート調査」の結果をもとに、「『同じ企業で一生働く』という意識画像は薄れてきている。これからは転職したり、フリーランスで働く人が増えるのではないか」「そのためには柔軟な労働市場が必要で、学校での教育も、あらかじめ嵌めるところが決まっているジグソーパズル型ではなく、自ら課題を見つけて解決する教育が求められ、社会を変えるような開発はそういうところから生まれる」と提言。最後にシリコンバレーの高校の先生を中心とする「4泊5日のワークショップ+ビジネスプランコンテスト GTE(16年から和歌山市で開催、一般社団法人カピオンエデュケーションズ主催)に私も参加しているが、こうしたイベントを後押ししていきたい」と説明を締めくくった。
 (右上の写真は“Station F”。同電子版から引用)

情熱を持つ研究者や多くの人の間で新しくことを起こす人を応援

 この市川理事長の説明を受けてプレゼンしたのが、CSAPに取り組む5社で、いずれもVB、スタートアップ企業を支援するとともに、自らの企業もVBであるだけに、個性的な発表がされた。
画像 最初に登壇したのは株式会社リバネス(2002年6月設立、以下、すべて株式会社で社名の株式会社は略)の高橋修一郎 代表取締役COO(最高執行責任者)で、「会社を始めたのは修士2年の時で、子供に理科や科学に関心を持ってもらえるような講座を開く事業からスタートした。当社は博士人材が従業員の半数以上という研究者集団なので、子供向けの講座とともに、今はシードアクセラレーターとして、主に大学で開発された技術シーズを、違う分野の専門家・研究者、VC、町工場などといっしょになって世の中に出せる方法を考えるコミュニケーターとして活動している。特に研究者がパッションを持って立ち上げたプロジェクトを会社設立前から支援している」と文字通りパッションを感じさせる口調で述べた。
 それに対して、「大手企業での事業開発とスタートアップ(起業)の両方のバックグラウンドを持っているメン画像バーで構成している」というゼロワンブースター(12年3月設立)の内田光紀ディレクターは「(メンバー全員が)『日本を事業創造できる国にして世界を変える』という熱い思いを共有している」と参加者に語りかけながら、「日本だけでなく世界的にも大手企業は苦しんでいる。その原因は保守性や(決定するまでの)時間の遅さなどにあるが、日本では社内カタリスト(触媒=社内外を結ぶ人材)が活躍し始めている。アントレプレナーとは、いろんな人たちの間で新しく、ことを起こす人で、そうした人たちを応援するとともに、地域にもコミュニティをつくり、グローバル市場に直接アクセスできるように支援したい」と力を込めた。

VBと事業会社の連携で実証実験、「新しい幸せを創造していく」

 続いて、「自らもスタートアップ企業で、6社のVCや事業会社から投資を受けている」と前置きして話を始めた画像のが、Creww(12年8月設立)の取締役オープンイノベーション事業統括の水野智之氏で、スタートアップ企業と大手・中堅企業とのコミュニティをつくり、実証実験を通して事業化フェイズに進むことができるような支援とともに、「コミュニティマネージャーが常駐する『docks』(港区虎ノ門の城山トラストタワー)を設け、ハンズオンで個別の相談に対応している」とコミュニティスペースにおける成果も説明した。
 また、QUANTUM の川下和彦 ビジネスディビジョン ディレクターは「グローバルな広告会社TBWAと博報堂画像の合弁会社の子会社として2016年4月に独立した」「エンジニア、クリエイター、ストラテジスト、マーケッター、コンサルタントなど、それぞれ得意な分野を持っている従業員が集まり、『クリエイティブ ダイバーシティ』を企業文化として培い、『新しい幸せを創造していく』のを目標にしている」と自社を紹介。他の企業とのパートナーシップによって、「アイデアから事業化まで一気通貫してできる」のが同社の強みの1つだとアピールした。

7月に日本進出-13カ国に拠点、ベンチャーのアルゴリズムが基本

 一方、今年7月に設立されたPlug and Play Japanの矢澤麻里子 取締役COOは「経営統合システムのエンジニアや日本と米国でのVC投資を経て、Plug and Play Japanに参画」という経歴で、「Plug and Playは2006年にシ画像リコンバレーで設立されたベンチャーキャピタルで累計800社以上に投資し、スペースを提供するアクセラレーターとしては1000社以上のスタートアップを支援している。この3年ほどの間に一気に世界にネットワークを広げ、現在、13カ国に25拠点がある」とスライドに映しながら、日本では10社の大企業の協力を得てスタートし、「インバウンドとアウトバウンドの懸け橋になる」とともに、「1社のスタートアップに対して、いくつかの大企業が参加したコンソーシアムをつくり、スタートアップのアルゴリズムで回して事業を創出したい。これこそがオープンイノベーションではないか」と力説。「渋谷駅から徒歩5分のところにコワーキングスペースをつくったので、ここでVCやメンター(支援者)が集まるイベントなどを開き、日本のベンチャーエコシステムの構築に貢献したい。皆様も参加を!」と呼びかけた。

熱い思いに共感し社会が変わる、長年のVECのデータは貴重

 この後、懇親会に移行。経済産業省 産業技術環境局の松岡建志 技術振興・大学連携推進課長が「市川理事画像長が説明されたように24.9%増とベンチャーキャピタル(VC)の国内投資は順調で、ベンチャーキャピタル、ベンチャー企業ともに元気がある。経済産業省は5月に『事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(初版)』をまとめたが、この手引きには、先行企業の事例とともに、どこで連携が止まってしまったのかなどについても整理している。熱い思いに共感するところからしか社会は変わらない 。『手引き』が、少しでもそれに役立つようにと思っている」と挨拶。
 その後、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の古川一夫 理事長が「NEDO画像はエネルギー産業だけでなく、ここ数年、ベンチャー企業や起業を志す方々の支援に力を入れている。ベンチャーで上場する企業も増えているが、VECは、今日のようにベンチャー企業に対する社会的な認識がない時代、『ベンチャーって何だ?』と言われていた、ずっと前の時代からデータを集計してベンチャーキャピタルから信頼され、ベンチャーキャピタル、ベンチャー企業の発展に貢献している。これは貴重なことだ」と強く訴えて乾杯の音頭を取ると、会場に賑やかな懇談の輪が広がった。
《 「ベンチャー白書2017(電子版)」は分析編(PDFファイル、コラムや政府・関連団体のベンチャー支援策などを含む)とデータ編(Excel)によって構成され、分析編だけで327ページの大作。VECのホームページを通してコンテンツ販売サイトの「DLmarket」で購入できる。価格は5000円(消費税別) 》
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VBの文化を理解した人がVBを支援する-当たり前の時代が来た

 筆者(松浦)が「もっとベンチャー企業を取材したい」と思って、日本工業新聞(現・フジサンケイ ビジネスアイ)を辞めてフリーランスになったのは、1994年6月で、当時も官民両方から「ベンチャー企業が増え発展しないと、日本経済は活性化しない」という声が聞こえていました。ただ、どのようにベンチャー企業を増やし発展させるかについては、議論がまちまちでした。
 その中で、私が最も間違っていると思ったのは「大企業に長年、勤めた人は(たくさんの)経験を持っているから、そういう人がベンチャーの支援をするのが良い」という意見です。何故、画像間違っているかと言えば、「名刺と肩書と組織で仕事ができる大企業」と「実績も知名度も信頼も組織も資金もないベンチャー企業」とは、根本的に文化が違うからです。
 さらに、その意見の裏には「(そもそも)大企業のほうが、(小さな)ベンチャー企業より優れている」という発想があり、こういう考え方がなくならないとベンチャー企業が増えて発展するような社会は来ないなと私は強く思いました。
 では、どうしたら良いのか――。それは、「ベンチャー企業の文化(アルゴリズムと言っても良いと思います)を体験し理解した人が、新しいベンチャーを支援する」という循環が生まれることです。そうした潮流は、すでに何年か前から起こり始めていますが、今回の5社のプレゼンを聞いて、その潮流の層が厚くなったと感じました。
 こうした地道な活動が日本を活性化することを期待したいと思います。
 日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
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〈昨年の「ベンチャー白書2016」に関しては、このブログ「温故知新」の2016年12月17日の記事に書いています。併せて、参照して下さると幸いです〉
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