松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

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zoom RSS 日本VC協会がメディアプレゼン−17年 日本のVBの資金調達額過去最高−宇宙VB3社の経営者が討論 

<<   作成日時 : 2018/02/19 20:04   >>

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「欧米亜に拠点」「従業員の半分以上が外国人」−国際的に躍進

 一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA、会長・仮屋薗 聡一氏=株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナー、本部・東京都港区、ここでは日本VC協会とも表記)は2月8日、アーク森ビル(同・港区赤坂)の「KaleidoWorks(カレイドワークス)」内にある「CrossOver Lounge」で、メディアプレゼンテーションを開催した。新聞、雑誌等の担当者を対象に画像開いているもので、最近のJVCAの活動が報告されるとともに、「日本最大級のベンチャーデータベース」を持つ株式会社ジャパンベンチャーリサーチ(JVR、東京都渋谷区、以下、社名の株式会社は略)のシニアアナリストが2017年の国内ベンチャー企業(VB)の資金調達状況を解説。併せて、月の資源開発、人工衛星のデータを活用したビジネスの活性化、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の位置観測と除去などを手掛ける宇宙ベンチャー3社の経営者がパネルディスカッション。特に、JVCAの会員が100社を超えたことや17年のVBの資金調達額が2700億円超と過去最高になるなど、日本のVBを支援する動きが高まっていることが強調されるとともに、宇宙VBの経営者からは、「宇宙は未知の領域。夢はあるが、法律面などが未整備でリスクも大きい。参入障壁も高い」といった声が聞かれる一方、「米国、ヨーロッパ、シンガポールに拠点を置いている」「従業員の半分以上が外国人」など、大気圏を超えて新しいビジネスの創出に挑戦する日本の宇宙VBが、国際的に発展しようとしていることを強く感じさせた。

 会員が100社超に−地方創生を支援し世界の会議にも参加

 メディアプレゼンテーションはまず、(都合で欠席した仮屋薗会長に代わって)JVCAベンチャーエコシステム委画像員会 VC(ベンチャーキャピタル)ナレッジ部会・部会長の平野清久氏(大和企業投資取締役)が協会の最近の動向について、「ここ数年で会員が急増し現在、VC会員が75社、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)会員が29社で、合わせて100社を超え、賛助会員も50社、賛助個人会員も26名に上る。しかも新しいVCとともに、未加入だった大手VCのジャフコやみずほキャピタルも加盟した」と活動基盤が強化されている旨、説明しながら、具体的な活動として、ベンチャーエコシステム委員会、ファンドエコシステム委員会、オープンイノベー画像ション委員会のもとに7部会を設け、ベンチャーキャピタリストや中堅ベンチャーキャピタリストの育成・研修、会員を対象にした勉強会などを実施するとともに、「各地域のVCトップや関係者との懇談会、地域イベントの後援などにより地方創生を支援する一方、世界やアジアのVCカンファレンスにも参加している」と国内外で活動の幅を広げていることをスライドに映して紹介。
 「JVCAは2002年11月に設立されて、今年が16年目。これからも新産業創造を通じて、日本発世界経済の発展に寄与するのが使命」と訴えた。
 (左上のスライドの上の写真の右が仮屋薗会長)

調達額は12年から増加−1社平均3億円−5億円以上も15%超

 この後、JVRのシニアアナリスト・森敦子氏(MBA=経営学修士)が国内VBの資金調達動向を発表(対象は同社が独自の基準でVBと判断した企業)。最初にJVRが2011年4月の設立で、16年12月に(「経済情報で、世画像界をかえる」というミッションを掲げる)ユーザベース(UZABASE、東京都渋谷区、東証マザーズ上場)の子会社になったことと、JVRが運営する「アントレペディア(entrepedia)」は専属のリサーチャーが日々、ニュースをもとにデータを構築するだけでなく、ユーザー自身も自社の情報を発信できるなど、「ベンチャーと投資家をつなぐコミュニティー」だと前置きして、国内VBの資金調達金額は12年の636億円から増え続けて17年は2717億円と過去最大。1社当たりの調達額の平均値も3億円、中央値も1億円で、5億円以上を調達した企業が15%超あるなど、「大型化している」とスライドを使って示した。

東京都が74%、大学発は東大、京大、阪大、慶応、東工大…

 また、VBの所在地別の資金調達社数は「東京都が約74%と多く、かつ増えている」「額は少ないが、沖縄県は増えている、これは県が医薬・バイオなどのVBの誘致・育成に力を入れているからではないか」と分析。併せ画像て、大学発VBの資金調達は「(社数ベースで)東京大学、京都大学、大阪大学、慶応義塾大学、東京工業大学が上位5で、東大が全大学発の1割近くを占めている」「中高生が創業する企業も出てきている」と最近の新しい傾向に言及した。
 さらに、KDDIが昨年8月に(200億円と言われる金額で)通信プラットフォームを開発・提供するVBのソラコム (東京都世田谷区)を買収したことを挙げ、「こうした案件が出てくると、IPO(新規株式公開)以外のEXIT(出口=VCによる投資回収)の活発化も期待できる」「大手企業から面白い技術やサービスを持っているベンチャーを見つけたいという相談が多いのを肌で感じる」と指摘。「データは2月5日時点のもので、今後、変動する可能性がある。来月に詳細なレポートを出す予定だ」と述べて話を締めくくった。

人類の生活圏を宇宙に拡大、日本で唯一・月面探査レース参加

 続いて行われたパネルディスカッションでは、ispace(東京都港区)の袴田武史 代表取締CEO(最高経営責任者)、アクセルスペース(東京都中央区)の中村友哉 代表取締役CEO、アストロスケール(本社・シンガポー画像ル)の岡田光信 代表取締役CEOがパネリスト。JVCA常務理事の渡辺洋行氏(B Dash Ventures代表取締役社長)がモデレーターとなり、特に宇宙開発の経済的意義を巡って意見交換した。最初に渡辺氏が3氏に各社の事業の紹介を促すと――。
 袴田氏は「ispaceは2010年9月の設立で、「『Expand our planet.Expand our future.』が大きなスローガン。人類の生活圏を宇宙に広げ、地球と月が一つのエコシステムとなって、宇宙で経済が回る世界の実現を目指す『MOON VALLEY構想』を掲げている」「日本で唯一、国際的な月面探査レースの『Google Lunar XPRIZE(主催・XPRIZE財団)』に参加する『チームHAKUTO』を運営している」と説明した。

着陸船と超小型探査機開発、JAXA、ルクセングルク政府と覚書

 そのため月面着陸船とその中に搭載する超小型惑星探査機(2台)を開発。性能を向上させて、2020年くらいには月への輸送ビジネスを開始し、25年くらいには月面の水資源開発に着手したいと当面の青写真を描いた。
 同社は「月の資源の採掘、利用、産業の創出」に関して、16年に国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構画像(JAXA)と、昨年3月にルクセングルク政府と覚書を締結するなど、大きな支援の輪を広げており、ルクセンブルクと米国のNASA(航空宇宙局)の施設の中にオフィスを開設。「40名超のスタッフの7割はエンジニア、半分以上が外国人」で、資金調達でも第1回目のシリーズAとして101億5000万円(このメディアプレゼンテーション後、2億円を追加)という日本のVBとしては最大級の投資を受けており、「これを当面の研究開発資金にしたい」と袴田氏はスライドで表示した。

宇宙データでビジネスを活性化、修士時代に世界初の小型衛星

画像 一方、アクセルスペースの中村氏は「我々は宇宙から得られるデータを使って地球のビジネスを活性化していこうという事業に取り組んでいる」と参加者に語りかけ、「03年・大学院修士2年の時に、一辺が10cm、重さ1kgの手作りの小型衛星『キューブサット(CubeSat)』を世界で初めて打ち上げた。この衛星は今でも地球を回り、アマチュア無線に使われているが、これを含めて東京大学と東京工業大学で、それぞれ3つ小型人工衛星を開発し、それをもとに08年8月に会社を設立した」と自身の経歴を振り返った。

 JAXAから小型衛星の製造を受託、22年までに衛星を50基に

 まさに“小型人工衛星の草分け的存在”で、中村氏は「小型人工衛星はシンプルで速く造れ、コストも安い」「昨年夏に当社としては3基目の衛星を打ち上げた」と話を続けながら、同社の衛星データが活用されている例とし画像て、気象情報会社が「距離の短い北極海航路を通って、日本からヨーロッパにものを輸送する際の航路の安全に関する情報を船会社などに提供している」ケースを挙げるとともに、こうした実績が認められ、「2年前にJAXAから小型衛星の製造を受託することができた。通常、衛星の製造を受託されるのは大企業ばかりなので、ベンチャーが国の政策に関わっていく突破口になったかと思っている」と力を込めた。
 さらに今後の計画として、「22年までに自社の小型衛星を50基まで増やすとともに、より精細な画像が撮れるようにしたい。そうすれば、森林の伐採状況、農産物の生育情報、 都市の変化、港に入る船の動向、台風など災害の観察、予兆に役立つ」と地球のビジネスの活性化を再度、説明し話を終えた。
 (左上の写真は右から袴田氏、中村氏、岡田氏)

宇宙ゴミを観測・除去する装置の開発−シンガポールでスタート

 このアクセルスペースも「従業員45名のうち30人がエンジニアで、14人が海外から来ている」が、最初からシンガポールに本社を置いて事業をスタートしたのが、アストロスケールの岡田氏だ。
 岡田氏は13年5月に同社を設立。宇宙ゴミ(Space Debris)の位置を観測し除去するシステム・装置の開発に乗画像り出したが、「やっと宇宙ゴミについて知られるようになってきたが、今や天気予報、衛星放送、GPS、時刻の設定などは人工衛星がなければできず、これからはインターネットも(本格的に)衛星を介するようになる。宇宙は地球の経済圏になっている」と強い口調で説明した後、「宇宙で運用されている人工衛星は約1400基だが、これまでに8000基が打ち上げられている。古い人工衛星や(衛星を搭載して宇宙の軌道に乗せる)ロケットの上段、宇宙空間で衝突した破片などを合わせると2万3千個くらいのデブリがある」「こうしたデブリは地上600km〜1000kmのところを秒速7〜8kmで動き、大きさは0.1m〜10mで、衛星に当たると衛星を爆発させる。連鎖衝突も起きている」「事故率は低いが、ここを超えないと月に行けない。まだ、比較的大きいうちに除去しなくては、新しい衛星を打ち上げられなくなる……」と宇宙ゴミ除去の重要性を指摘した。
 (右上の画像の赤い点々が宇宙ゴミ)

日本とロンドンにも拠点−No.2はNASAの元・エグゼクティブ

 しかし、「宇宙のゴミ除去にはルールも技術も市場もない」。そこで同社が開発しているのが、スペースデブリの位置を観測してデータを提供する人工衛星とデブリと合体して大気圏で燃やす人工衛星で、位置を観測する衛画像星は昨年、打ち上げたが失敗し、ある大学が研究を引き継いでいるという。
 このため、「デブリと合体する衛星を開発し打ち上げたい」と岡田氏は力説した。
 アストロスケールは15年に日本にR&D拠点を開設(東京都墨田区)、ロンドンにも拠点を置くが、「当社のナンバー2はNASAの元・エグゼクティブ(Executive)」と同社もispaceやアクセルスペースと同じように世界から人材を集め、JAXAともスペースデブリの除去に向けて共同研究契約を結んでいる。
 人材と公的機関による評価(社会的信用)――ここに、この3社のVBの大きな強みがあると言えよう。
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日本の宇宙VBは12〜13社、起業層が変化し日本のVBも大変革

 この後、渡辺氏が日本の宇宙開発の現状、問題点、将来などを質問すると、「2040年頃には1000人くらいが月に住み、数万人が月や宇宙に旅行する」「日本の宇宙予算は米国の10分の1」「月面で資源開発する場合の土画像地の所有権など、法整備が世界的にもできていない」「日本の宇宙ベンチャーは12〜13社」「宇宙ビジネスは航空産業の50〜60年後を追っている」などの回答が聞かれました。
 また、筆者(松浦)がパネリストに個人的に聞いたところ、「衛星画像とドローン(小型無人飛行体)で撮った画像を組み合わせると、より良いデータ得られるのではないか」といった答えも返ってきましたが、この3人の経歴を各社のホームページなどで見ると、「以前、このような経歴の人でベンチャー企業を起こす人は、極めて少なかったな」という思いを深くします。
 “既定路線”でも優秀で、しかも自立心が強く、志も理念も持ち、実践に向かってチャレンジする。ここに日本のVBの大きな変化を感じます。さらに言えば、こうした生き方の人が増えることが「働き方改革」「一億総活躍社会」の基盤の1つになるのではないでしょうか。
 (右上の写真は会場となった「KaleidoWorks」。同じフロアに日本VC協会の本部があり、VC3社のオフィスもある)
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初代 JVCA会長の堀井氏逝去-日米の投資額の差は以前から

 日本ベンチャーキャピタル協会の初代会長であった堀井愼一氏(当時の日本インベストメント・ファイナンス社画像長、元・大和証券副社長)が1月20日に逝去されました(合掌)。 
 左は筆者が当時、フジサンケイ ビジネスアイにしていた連載に書いた記事=2005年6月1日付=です。この時に堀井氏は「日本のVCの投資額は米国の30分の1。経済の大きさを考えても日本は少なすぎる。日本のVCはまだ創成期……」と言っていました。
 一般財団法人 ベンチャーエンタープライズセンター(VEC、理事長・市川隆治氏、東京都千代田区)の「ベンチャー白書2017」によれば、日本のVCによる投資額が1529億円(16年度)であるのに対して米国は約7兆5000画像億円(16年暦年)。中国は約2兆2000億円(同)。日本と米国、中国との投資額の違いは、JVCの森氏も触れていました。どの程度が経済の健全な発展にとって適当か判断が難しいところですが、日本はVBの数、VCの投資額がともに、もっと増えても良いのではないかと思います。

 日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
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(前回のメディアプレゼンテーションの様子は、このブログ「ベンチャー温故知新」の2017年06月13日の記事に書いています。併せて参照して下さると幸いです)
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