松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

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zoom RSS 日本VC協会がメディアプレゼンテーション-「すばらしいチャンス到来。リスクマネー供給で日本を活性化」

<<   作成日時 : 2014/10/26 14:45   >>

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大変革期−組織型から個人型に、大企業は投資のパートナー

 一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会(略称・JVCA、会長・尾ア一法氏=アント・キャピタル・パート画像ナーズ株式会社代表取締役会長、本部・東京都新宿区、以下、社名の株式会社は略)は22日、虎ノ門ヒルズ(東京都港区)で「第1回メディアプレゼンテーション」を開催した。JVCA(日本VC協会)が初めて開くメディア向けのイベントで、独立系ベンチャーキャピタル(VC)の代表者や創業した企業をM&A(合併・買収)によって売却した経営者らがパネリストとしてディスカッション。「日本でも独立系VCが増えてVCが組織型から個人型に変化し、VCとベンチャー企業(VB)との距離感が近くなってきている」「シリコンバレー並の金額の投資がされるようになっている」「大企業が投資のパートナーになってきた」などVC、VBを取り巻く新しい潮流を巡って熱のこもった議論が交わされ、「70年代から始まった日本のVC業界が大きな変革とチャンスの時を迎えている」ことを強く感じさせた(冒頭の写真=会場にはマスコミや協会の理事、関係者らが参加)。

ベンチャーキャピタリスト養成で入門・初級編も、協会の間口拡大

 プレゼンテーションは最初に、協会の尾ア会長が「一昨年くらいから、すばらしい起業家が輩出して新規上場も画像順調に増え、(金融庁の)金融審議会でもリスクマネーの供給について熱い議論がされている。9月には経済産業省によって、ベンチャー創造協議会も設立された」と最近の動きに触れながら、「国のすみずみまでリスクマネーを供給し、ハンズオンによる創業支援、経営支援をするのがVCの役割。毎年しているプロのベンチャーキャピタリスト研修の輪を広げ、来年は入門編、初級編も実施したい。そのために協会の加入条件や制度も変え、間口を広げている」「ベンチャー企業の成功のカギの1つは大企業との提携や協業で、両者のマッチングを進めたい」と協会の今後の方針を説明。「アベノミクスでベンチャー(支援)が政策の柱になり、70年代から始まったVC業界は今、もっともすばらしいチャンスの時期にある」と力強く“宣言”した。

経産省−起業家やベンチャー支援人材を海外に派遣し武者修行

 続いて、ベンチャー創造協議会の事務局も務める経産省 経済産業政策局 新規産業室の佐々木啓介 室長が画像「アベノミクスの大きな柱の1つが産業の新陳代謝で、そのためにベンチャーを育て、新しい産業を起こしたい」と前置きして、「IPO(新規上場)もあるが、グローバルな動向を見ると、ベンチャー企業と大手企業との連携やM&Aを増やすことも重要で、それを進めようとベンチャー創造協議会を立ち上げた」「起業家やベンチャーを支援する人材を米国、アジア、ヨーロッパなど海外に派遣し、武者修行するための予算を要求している」と経産省の取り組みなどを中心に挨拶した。

ここ5年間で独立系VCが増加、調達額も金融機関系を上回る

 この後、独立系VCのインキュベイトファンドの村田祐介 代表パートナーが@VCファンドの担い手Aファンドの機構B投資環境CExit(エグジット=出口=投資先VBの株式売却など)の4つに関する変化について、独自の画像調査をもとにプレゼンテーションした。
 その中で村田氏はまず、これまでの日本のVCは証券、銀行の子会社など金融機関系が多かったが、ここ5年ほどの間に独立系VCが増え、「2013年から直近までの間に、37社のVCにより総額2581億円のファンドが新設されたが、金融機関系は922億円で全体の36%であるのに対して、独立系は1158億円で45%に上る」とスライドで表示。併せて、米国のVCは個人のベンチャーキャピタリストがGP(General Parter=無限責任組合員、業務執行組合員)になって、LP(Limited Parter=有限責任組合員)から資金を集めるのが一般的だが、「日本でもそういう環境が芽生えている」と指摘した。

 コーポレートVCの社員も個人のベンチャーキャピタリストに

 さらに事業会社系のコーポレートVCにも変化があり、「社員でありながら、個人のベンチャーキャピタリストとし画像て認められる人が増え、ベンチャー企業との間で信頼関係が生まれている。日本のVCはベンチャーキャピタリストが社員・サラリーマンで、人事異動で(担当部署が)変わってしまい、力を発揮できないことがあったが、組織型から個人型へと変わってきている」と分析。また、「13年以降、24社のVBが10億円以上の投資を受け、3億円超の投資を受けたVBも50社を超える」と投資額の変化についてもスライドに映した(後段の写真参照)。

VBが生まれるエコシステムも整備-「内側にいると熱を感ずる」

 最後にExitに関して、100億円以上で大手企業に買収されるVBが出てくるとともに、「被買収企業(VB)の画像経営者が買収企業の幹部になるケースも数としては少ないが、増え始めている。これはシリコンバレーでは当たり前のことで、スタートアップ(起業)の経験を持つ人を幹部にすることにより、イノベーションを推進させるのが狙い」と説明しながら、日本のVC、エンジェル(個人投資家)などの投資額は米国の何十分の一だが、「起業家とベンチャーキャピタリスト、投資家との距離感が近くなり、スタートアップが生まれるエコシステムが整い始めている。そうした内側にいると熱を感ずる」と文字通り、熱意を込めてプレゼンを締めくくった。

変革期のリーダー−4社の独立系VCの代表者らがパネリスト

 この後、セッションTと同Uの2つのパネルディスカッションに移行。Tでは本荘修二 本荘事務所代表・多摩大画像学大学院 客員教授がモデレーターを担当。4社の独立系VCの代表者らがパネリストを務めた。
 パネリストはインキュベイトファンドの赤浦徹 代表パートナー、WiLの松本真尚(まさたか)共同創業者、グロービス・キャピタル・パートナーズの仮屋薗聡一 マネージング・パートナー、B Dash Venturesの渡辺洋行 代表取締役社長で、本荘氏が「(私も三十数年、ベンチャーの世界にいるが)やっと変革期が来て、ワールドクラスになってきた。パネリストは、その変革期のリーダー」と解説し、各自の自己紹介を促した(写真は左から本荘氏、赤浦氏、松本氏、仮屋薗氏、渡辺氏)。

 「19年前から孤軍奮闘」「実業の経験のあるメンバーで創業」

 それによれば、「2011年からファンドをつくり、シードやアーリーステージに特化して投資をしている。今、2号ファンドの組成中で、2号ファンドはレーターも含めた投資をする予定」(B Dash 渡辺氏)。「グロービスは19年画像ほど前の96年から独立系として“孤軍奮闘”し、これまで4本のファンドをつくり、500億円の資金を過半は海外から得て、100社超に投資。Exitは70〜80社ほどで、IPOも投資先の4分の1〜30%近くある」(仮屋薗氏)。
 「ほぼ全員が実業の経験のあるメンバーで創業し、今年1月にファンドをレイズ(組成)した。ファンドのLPは大企業で、大企業のオープンイノベーション、カーブアウト(特定の部門の分離・独立)、VBとのマッチングをメインの事業にしている。私個人は1999年に会社(PIM)をつくり、赤字で社員10名だったが、2000年にヤフーに55億円で売却し、その後、ヤフーで投資や買収などを担当した」(WiL 松本氏)。「99年に(大手VCのジャフコから)独立し、10個(本)のファンドをつくり 220社ほどに投資している。今、11本目を組成中で、これまでのExitは売却のほうが多いが、今年はIPOも増えている」(インキュベイト 赤浦氏)。

シリコンバレー並の投資額、世界を目指すVBには100億円も

 こうした自己紹介の後、本荘氏が「最近は以前と何が違うのか」と質問を投げかけると、仮屋薗氏が「96年に5億(400画像0万)円でファンドをつくった時は13社に投資して6社上場したが、1社あたりの投資額は二千数百万円だった。それに対して、最近は投資先で40億円以上の資金調達をしたVBが3社あり、これはシリコンバレーのVB投資額に匹敵する。また大企業とのコラボレーションが増え、大企業が投資のパートナーになってきた」と回答。松本氏も「シリコンバレーにオフィスがあり、リアルタイムで情報をシェアしているが、スマートフォン向けアプリなど、最初から世界標準を目指すVBには、LPと一緒に100億円の出資もあり得る」と投資額が大きくなっていることを挙げた(左上は村田氏が映したスライド)。

起業したい人もVCも増え相乗効果、VB経営や財務等のプロも

 それに対して、本荘氏が「資金は増えたが、では人材は?」と聞くと、赤浦氏が「起業したい人とVCを集め、ビ画像ジネスプランを審査するキャンプを年2回行い、第7回を10月24、25日に開くが、これまで半分くらいが企業を立ち上げている。最近は起業したい人とVCをやる人の両方が増え、相乗効果を挙げている」とヒト、カネの両面が揃い始めていることを説明。また、「複数の会社を創業しているようなベンチャー経営に慣れている人が増えている」(松本氏)、「起業家だけでなく、マーケティング、技術、財務などのプロがチームを組み、VCと一緒にビジネスプランをつくるケースも増えている」(仮屋薗氏)などVB、VCに必要な人材の層も厚くなっている点も強調された(右上は村田氏のスライド)。

泥臭く支援する姿勢で、大企業ではトップのコミットメントも重要

 一方、スタートアップ企業に対する支援の方法に関しては、渡辺氏が「KDDIに売却した会社」を例に出して、「エンジニアがいるだけの会社で、モノはできそうだが、マーケティングもだめで、決算書もつくっていないところからテコ入れした。いつも新規事業担当者の感覚を持って支援している」と姿勢や精神も大切なことを主張。赤浦氏も「起業家の近くにいて、『ガンバレ、ガンバレ』と泥臭く支援する」と苦笑交じりに、基本的な姿勢を語ったが、大企業との提携やカーブアウトなどに関しては、松本氏が「窓口の新規事業担当者(担当役員)だけでなく、会社としてコミットメントしてもらうため、社長や研究所のトップにも認識してもらうことが重要」とアドバイス。同時に「大企業は自分たちのエンジンとして(優秀なメンバーがいる)VBを買収する」と力説し、セッションUでは、この買収されたVBの創業者、経営者が自らの体験を通して議論を繰り広げた。

創業した会社を売却し楽天やヤフーの役員に、CVC社長も兼任

 セッションUはグリーベンチャーズの堤 達生パートナーがモデレーターを担当。パネリストは小澤隆生ヤフー画像執行役員ショッピングカンパニー長、前田悠太ポケラボ代表取締役社長、山田進太郎メルカリ代表取締役社長の三氏で、堤氏が「グリーベンチャーズはグリーの子会社で、CVCファンドも運営している」と自己紹介すると、小澤氏も「1999年につくった会社(中古品の売買サイトを運営するビズシーク)が2年後に楽天に買収され、楽天に8年ほどいて、5年くらいは役員も務めた。2011年に2つ目の会社(クロコス)を設立し、1年後にヤフーに買収され、今はヤフーの執行役員であるとともに、ヤフーのCVCのYJキャピタルの代表取締役として30億円のファンドを運営している」と自己紹介。併せて、「先日(10月1日)、創業メンバーだったnanapi(ナナピ)をKDDIが買収した」とM&Aの対象になった会社が3社になったことに言及した(写真は左から堤氏、小澤氏、前田氏、山田氏)。

138億円のM&A、米社に売却しスマホアプリで2社目を創業

 一方、前田氏は「ポケラボはモバイルソーシャルゲームの制作会社で、2012年(12月)にグリーに1画像38億円で買収された。私はポケラボに創業間もない頃に入り、今はグリーのアジア担当役員も兼ねている」と自己紹介。また個人間でモノを売買できるスマートフォン(スマホ)向けサイトを開発・運営するメルカリの山田氏は「2004年につくったウノウを10年8月にVCの紹介で(ゲーム制作会社として知られる)米国のZynga(ジンガ)に売却。ジンガで1年半ほど働いた後、世界一周旅行をして、去年2月にメルカリを設立し、今年9月に米国版をリリースした」と新事業で国際的な成長を目指していることも報告した。

 「ペーパーの厚さは3センチ、弁護士費用も」「3週間で契約」

 この後、堤氏が「M&Aにいたったプロセスや表に出ていないことを…」と話を向けると、山田氏が「『mixi Plat画像form』のオープン化に伴い業績が良くなり、VCから売却の話が来た。売却の前年末にジンガの人に会っていっしょに食事などをしたが、10年の5月から7月まで交渉し、8月にサインした。ペーパーの厚さは3センチ、弁護士費用もかなりかかった」と当時を思い起こしながら、その一端を披露。また前田氏は「グリーは世界に事業を展開する力を持っているうえ、フィロソフィーが我々と合うこともあり、声がかかってから3週間で契約した」とスピード交渉であったことを明かした。

最初はVCとの契約条項、2社目は「人と事業が欲しい」で売却

 一方、小澤氏は「15年近くも前のことなので、もう忘れてしまって…」と参加者を笑わせながら、「会社をつくった時は売却しようなどとは全く考えなかった。1社目はVCから投資を受け、その契約条項との関連で売らなけれ画像ばならなくなった。2社目はヤフーから事業と人が欲しいということで話が来た」「買収は転職に近いとも言える」と説明。さらに前田氏が「グリーは買収と同時に投資もしてくれ、自分たちのやりたい環境をつくってくれたが、グリーの中でポケラボは尖兵隊。ここからいかに成功に結び付けるかだ」と買収後の課題を挙げ、セッションUは終了。最後にJVCAの安達俊久 副会長(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ 代表取締役社長)が「こういう試みは今日が初めて。今後も開いていくとともに客観的な数字、情報を提供していきたい」と挨拶し、「第1回メディアプレゼンテーション」は幕を閉じた。
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養成講座でVB投資の社会的意義を−学生やエンジェルも参加

 ディカッションでは「M&Aの担当者がせっかちで……」とか「VCと険悪な関係になったこともある」などの発言も聞かれたが、尾ア会長に筆者(松浦)が新しいベンチャーキャピタリストの養成について質問すると、「単にVBに投資してリターンを得るだけでなく、VB投資の社会的な意義や精神なども理解してもらえるような講座で、学生やエンジェルになろうとする人も参加できるようにしたい」ということでした。

日本初のVCは72年設立、VB投資の精神を基本に世界に発展を

 日本のVCは72年11月に京都エンタープライズディベロップメント(KED)と日本エンタープライズ・デベロップメント(NED、本社・東京都)が相次いで設立されたのに始まります。厳密に言いますと、設立日はKEDが11月14日、NEDが同27日で、KEDは京都経済同友会が中心になって設立。NEDは当時の日本長期信用銀行が幹事会社になり設立されましたが、KEDは77年に解散。NEDは長銀の破綻に伴い統合再編されています。
 日本のVC投資額は09年、10年にIPOが激減した影響で、一般財団法人 ベンチャーエンタープライズセンター(略称・VEC、理事長・市川隆治氏、本部・東京都新宿画像区)の調査によれば、09年度には875億円にまで減少しましたが、13年度は1818億円まで盛り返しています。今回のイベントで議論された「新潮流」がさらに強まるとともに、VB投資の意義、精神を基本に日本のVC、VBが発展することを願いたいと思います。
日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
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(このブログ「ベンチャー温故知新」の9月29日の記事にベンチャー創造協議会の設立、同7月16日に今年のJVCA定時総会の様子、また2010年10月21日に「ベンチャービジネスの歴史 その3−…」として日本初のベンチャーキャピタルのことなどを書いています。併せて参照して下さると幸いです)
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