松浦利幸「ベンチャー温故知新」VBの歴史と最新情報

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zoom RSS 日本VC協会が定時総会−成功・失敗の経験が積み重なりエコシステムが厚く…「変な人が認められる時代に」

<<   作成日時 : 2018/07/27 11:49  

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仮屋薗会長 4年目に 会員倍増、VCは熱意を持って顧客も紹介

 一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会(略称・JVCA、会長・仮屋薗聡一氏=株式会社グロービス・画像キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナー、本部・東京都港区、以下、日本VC協会とも表記、社名の株式会社は略)は7月20日、東京都港区の虎ノ門ヒルズ フォーラムで第16回定時会員総会とパネルディスカッション、懇親会などを開催した。総会では会長に引き続き仮屋薗氏を選任するとともに、副会長に赤浦徹インキュベイトファンド代表パートナー、半田宗樹 三菱UFJキャピタル代表取締役社長、中野慎三 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ代表取締役社長(以下、代表取締役社長は社長と表記)を選任した。総会後に挨拶した仮屋薗会長は、特に協会員の数が、この3年間で倍増し協会がパワーアップしていることを強調する一方、パネル画像ディスカッションでは、ベンチャー企業(VB)の経営者やベンチャー企業を支援するベンチャーキャピタル(VC)等の経営者が「VCは投資をしてくれるだけでなく、パッションを持ってお客さん(になるような企業)を紹介してくれた」「創業時に気合を入れていっしょに企業を回ってくれた」など、VBとVCが協力して事業を拡大してきたことが語られるとともに、「日本でも成功・失敗の経験が積み重なり、VBを育成するエコシステムが厚くなってきた」「今は変化の時代で以前は認められなかった、ある意味で変な人が認められるようになっている」といった主張が聞かれ、VBを取り巻く環境が大きく変化していることを強く感じさせた。

ファンドレイズの増額・運用力、内外機関投資家への対応力強化

 総会の後、第17期の理事・監事、21人が紹介され(右上の写真)、今回、ジャフコ(JAFCO)の松本季子(すえこ)執行役員(管理担当、ファンド運用担当)が女性として初めて理事に就いたが、その後、仮屋薗会長が「(私画像が会長になったのは2015年7月で)、14年度末(15年3月末)の協会会員数は、VC会員、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)会員、賛助会員(企業や事務所、団体等と個人)を合わせて、94だった。それがこの3年間で急増し、この1年でもVCが12社、CVCは18社、賛助会員が11の計41(社)増え、さらに今日の理事会で4社が加入し、198になった」「協会はベンチャーエコシステム、ファンドエコシステム、オープンイノベーションの3つの委員会を中心に活動し、ベンチャーキャピタリスト研修でこれまでに1000名を超える受講生を輩出している」などとスライドで示しながら、今期の目標として「日本ベンチャーキャピタル産業の飛躍的発展期における質的進展への寄与」を掲げ、「ファンドレイズ額の増加、機関投資家や海外の投資家への対応力、ファンドの運用力、イノベーション創出能力の強化などを図りたい」と訴えた。
〈当日の理事会で入会した4社を除く194会員の内訳は、VC76、CVC37、賛助(企業等56、個人25)〉

 勤め先の子会社が出資、「気合を入れて一緒に回ってくれた」

 その後、行われた「資金調達からの成長戦略」をテーマとするパネルディスカッションTでは、「Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)」の「起業家ランキング ベスト10」に選ばれたマネーフォワードの辻庸介社長CEO(最画像高経営責任者)とSansanの寺田親弘社長が、渡辺洋行B Dash Ventures社長(日本VC協会常務理事)をモデレーターに意見交換した。
 最初に渡辺氏が、両氏に自社の紹介を促すと――。
 辻氏は「2012年にお金の課題をインターネットで解決しようと創業した。従業員は300名くらいで、個人向けの自動家計簿・資産管理サービスと法人向けの会計に関するクラウドサービスを事業にしている。使いやすさが特長で、昨年9月、東証マザーズに上場した」と説明。寺田氏は「2007年の創業で、もう11年になってしまったが、『ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する』『出会う、が、世界を変えていく。』を理念に、法人向けの名刺管理サービスと個人向け名刺(活用)アプリケーションを提供している」と同社のテレビCMを映しながら説明した。
 続けて渡辺氏が両氏に資金調達について聞くと、「(私はソニー、マネックス証券に勤めた後、起業したが)マネックスベンチャーズやエンジェルから投資してもらい、創業メンバーも加えて1億円くらいの出資でスタートし、13年10月にジャフコから5億円の出資を受けた。5億円はプロダクト(サービス)をつくるための人の採用に使ったが、この時、ジャフコは『応援したいんです』と言ってくれ、地方金融機関やお客さんを紹介してくれるなど、担当者のパッションを感じた」(辻氏)、「赤浦さん(インキュベイトファンド代表パートナー)が創業出資してくれ、20〜30社、気合を入れていっしょに回ってくれた。1年後の最後の月を黒字にしろ。黒字でないと資金調達できないと強く言われた」(寺田氏)と、ともにVCが資金面だけでなく、ビジネスの面でも支援してくれた旨、強調した。
(右上の写真=右から渡辺氏、辻氏、寺田氏)

追加出資で事業が軌道に、国際的に通用する会社・インフラを

 さらに渡辺氏が「辻さんはジャフコから14年12月にも15億円、調達している」と話を進めると、辻氏は「当社もテレビCMをしており、資金をCMにも使ったが、これを機に(良い)人も来るという好循環が回り出した」と資金調達画像が、事業が軌道に乗る弾みになったことにも言及した。
 マネーフォワードは上場するまでに46億円ほどを調達。Sansanも14年以降に60億円以上を調達したが、寺田氏は「人は一気に増やせないが、CMは事業を広く知らせる有効なマーケティングになる」とCMの意義をアピールするとともに、両氏は「ソニー、トヨタ(自動車)があるから今の日本がある。私たちもグローバルに通用する会社をつくりたい」(辻氏)、「ビジネスのインフラとしてグローバルに発展させたい」(寺田氏)と将来構想を描き、渡辺氏が「(そういう)経営者の気持ち、能力を尊重してお金を出すのがVCの仕事」とディスカッションを締めくくった。
(左上の写真は左=寺田氏、右=辻氏)

ポジティブジャーナリズムメディアに、時代は中堅中小企業に活路

 一方、パネルディスカッションUは「新時代に求められる起業家像」をテーマに、モデレーターの仮屋薗会長が「長年にわたり愛を持ってベンチャー投資をしてきた」と紹介する2人のパネリストが、ディスカッションTに続いて熱のこもった討論を繰り広げた。
 その2人はレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長・最高投資責任者とD4V合同会社の高野真ファウン画像ダー兼CEO(日本VC協会専務理事)で、最初に仮屋薗氏が高野氏に「Forbes JAPAN」で起業家ランキングを公表していることに関して、「その思いは?」と聞くと、高野氏は「4年前に金融から(アトミックスメディアの代表取締役CEO兼『Forbes JAPAN』編集長に)転じ、その後、D4V(Design for Ventures)でVC投資もしているが、『Forbes JAPAN』はポジティブジャーナリズムのメディアにしようという思いでつくっている。単なるメディアではなく、高校生と大学生にただで配るなど、アントレプレナーの養成にも力を入れている」と参加者に語りかけた。
 一方、藤野氏は「私は資産運用会社で中小型上場株の投資からスタートしたが、『大きくて有名な会社を担当している者が偉くて、中小型株の担当者はレベルが低い』と言われて、外資系に移ったが、投資をしていくうちに上場する若い会社に興味を持つようになった。どうやって創業し成長したのかと、実際に経営者を起業の現場に訪ねて、ベンチャー(VB)の世界に入っていった。今、私はベンチャーに強気で、その理由は『日本にも成功・失敗の経験が積み重なり、エコシステムが厚くなってきた』『時代が中堅中小企業の発展に活路を見い出すしかないようになってきた』からだ」と高野氏と同様に力を込めた。
(右上の写真=右から仮屋薗氏、藤野氏、高野氏)

VBはビジョンと覚悟を持ち自ら起業−「大企業は社長がゴール」

 また、仮屋薗氏が「起業家どう選んでランキングするのか」と質問すると、高野氏は「ベンチャーキャピタリストや起業家、エンジェル投資家などで議論して審査するが、基準として5つの項目がある。それは、グローバルに活画像躍できるか、上場したりユニコーン(時価総額10億ドル=1000億〜1100億円以上)になれるか、実績はどうか。それから、CEOのクオリティと事業の社会貢献性だ」と回答。さらに、仮屋薗氏が「起業家の資質」について聞くと、高野氏は「ビジョン、スケール感、人を巻き込む力、覚悟」などを挙げた。
 それを受けて藤野氏は「ベンチャー(VB)は自ら起業し、代表取締役社長からスタートするが、会社をつくった瞬間は単なる貧乏人。だが、ベンチャーは(当初)社長がすべてをやる。それに対して大企業は、社長の役割は大きいが、企業規模が大きくなると役割は狭まってくる。大企業の社長(のほとんど)は転職経験がなく、新卒で入社し出世して社長になる。社長はゴールだ」と大企業とVBの社長の違いを指摘した。
(左上の写真は左=高野氏、右=藤野氏)

平均だけを見ているとわからないが、面白い若者が出てきている

 また、藤野氏は「明治大学商学部で2000年頃からベンチャーファイナンスの講師をしているが、以前は何もしな画像いという学生が40%くらいだったが、今は60%に増えた。その一方で、0.5%くらいは何があっても何かをしたいという学生がいた。それが1.5%くらいに増えている。ここが大きい。彼らは起業とは何かという勉強もし、実践しようとしている。平均(マス)だけを見ているとわからないが、面白い奴が出てきている。今年も9月から授業をするが、こういう学生が2%になっているのではないか」と若者を通してみた時代の変化を分析。高野氏も「まさに今は変化の時代で、20〜30年前には認められなかった、ある意味で変な人が認められるようになっている。若者が革命をつくる」と若者に期待をかけた。

100億、200億円の会社がたくさん出て、そこからユニコーンが…

 ディスカッションでは、6月19日に東証マザーズに上場したメルカリに関連して、藤野氏が「(VBを支援してユニコーンをたくさん創り出すという話も聞くが)時価総額が100億とか200億円になる会社が100社くらい出てくるような社会になるように背中を押したい。その積み重ねからユニコーンが出てくるのではないか」と裾野を広げることを提案。併せて、「ベンチャーキャピタル(VC)は本来はあこがれの職業。もっと人材が集まるようにしましょう」と呼びかけ、パネルディスカッションは幕を閉じた。

「J-Startup」で世界を革新するVBを選定、VC協会と二人三脚で

 この後、経済産業省 経済産業政策局 新規産業室の石井芳明 新規事業調整官(同日付で内閣府に出向し、画像科学技術・イノベーション創出を担当する企画官に)が経産省が6月から始めた新政策の「J-Startup」について、「内閣府が作成した『未来投資戦略 2018』には2023年までにユニコーンを20社創出するという目標が掲げられているが、『J-Startup』によって、世界に新しい革新を提供する企業を官民で集中支援してロールモデル(成功事例)を創り出し、ベンチャーを『ブーム』から『カルチャー』にしたい」とスライドに映すとともに、VCやVBの経営者らで構成された推薦委員による評価と有識者による審査などで92社を「(第一次)J-Startup企業」に選定したことを説明し、「6年間、新規事業調整官として仕事をしてきたが、これからもJVCAと二人三脚でやっていきたい」と挨拶した。

「潮目が本当に変化」「産業構造を組み替えるようなVBを支援」

画像 この後、懇親会に移行。仮屋薗会長が「この3年間に協会員が倍以上に増えたが、VC投資額も昨年は多分、3000億円以上で3倍になっている。メルカリの上場によって、潮目の変化が兆しから本当になり、機関投資家のベンチャーを見る目も変わり、来年はこの場で『国内外の機関投資家からお金を預かれるようになっ画像た』と言えるようにしたい」と開会を宣言。
 来賓として経済産業省の新居(にい)泰人 大臣官房審議官(経済社会政策担当)が「日本は米国などと比較するとプレーヤー(時代をリードする大手企業、先端企業)が変わらない。キーワードはイノベーション、リスクマネー、スタートアップで、この機を逃してはいけないという危機感を持って取り組んでいる。『J-Startup』により、日本の産業構造を組み替えていくようなベンチャー企業が出るように応援したい」と挨拶した。

地域の成長マネー供給を、協会と「大学発ベンチャー創出シンポ」

画像 また、金融庁 企画市場局の佐藤則夫 参事官も「VCの皆さんの努力で、成長マネー、ネットワーク、ノウハウなどのバックアップ体制が前進し、確実にエコシステムが伸びている。金融庁は、ここ数年、全国主要都市ごとに『地域の成長マネー供給促進フォーラム』を開催しているが、そこでは、創業段階でのリスクマネーの供給不足、地方には仲間がいないなどいう話が聞かれる。その結節点になるのが、VC」と協会に期待を寄せた。また、文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課の西條(にしじょう)正明課長は「文科省は画像次世代のアントレプレナーが育つ教育も重要だと考え、平成26年度(2014年度)から『EDGEプログラム』を始め、29年度からは『EDGE –NEXTプログラム』も実施し、今年からは海外で武者修行ができるプログラムも手掛ける計画だ。2年前からJVCAと『大学発ベンチャー創出シンポジウム』も共催している」とVBに関する教育を強化している旨、挨拶した。
 (後段に続く)


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規模拡大、運用成績の透明性、統計データ整備で海外の資金を

 最後に、年金積立金管理運用独立行政法人(略称・GPIF)の水野弘道 理事兼CIO(最高投資責任者)が「ここで挨拶するのは4回目だが、GPIFくらいの資金規模では、まずはオポチュニティ(opportunity=機会)がなけれ画像ば投資はできない。グローバルな運用コンサルタント等からは日本のVCへの投資はあまり意味がないと言われ続けているが、今、30兆円以上持っている日本の上場企業の株式の将来を考えると、米国の上場企業の新陳代謝の速さと比べた時に不安にならざるを得ない。日本もVCの皆さんのプロフェッショナルなリスクテイクに基づいて企業がどんどん生まれ、上場市場の新陳代謝が起こることが重要で、我々も後押ししたい。海外のコンサルタントから認められるには、VC投資規模の拡大、運用成績の透明性、統計データの整備が不可欠で、私たちが資金を供給して前向きな循環になるように」と話しながら、「個人としての感想」として、「VCの皆さんにはGPIF、政府、何するものぞという(自主独立の)気持ちで投資活動をしていただきたい」と笑いを誘って乾杯の音頭をとると、会場に賑やかな懇談の輪が広がった。
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起業家には「自主独立の気概、志、こうあるべきだという理念」

 懇親会で協会関係者にパネルディスカッションの感想などを聞いたところ、「日本も、米国のように今は赤字だが、将来に向かって新しい事業をしようと雇用も増やしている企業が上場してユニコーンになれるようなマーケットを認めるべきだ」「日本国内だけで事業をするのでは、ユニコーンになるのは難しい」「日本にはIT(information 画像technology=情報技術)を使った新しいサービスやバイオなどのテクノロジーを理解するプロの投資家が(ほとんど)いない」といった答えが返ってきました。「政府、何するものぞ」ではありませんが、筆者(松浦)も長年にわたり、VBを取材してきて、起業家には「自主独立の気概、志、こうあるべきだという理念・思い」が非常に強いのを感じます。
 可能なら政府(税金)に頼らないで、VBが増え発展し、そのVBが税金を納める――いささか理想的に過ぎますが、そうなるにはやはり、民間のVCの力が発揮されなくてはならないと思います。
 日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(リンク)
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〈昨年(2017年)の総会の様子は、このブログ「ベンチャー温故知新」の07月22日の記事に書いています。併せて、参照して下さると幸いです〉
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